酔古堂剣掃 / 集素・世態の炎涼に任す
琴觴自對,鹿豕為群;任彼世態之炎涼,從他人情之反覆。
新字:琴觴自対,鹿豕為群;任彼世態之炎涼,従他人情之反覆。
書き下し
琴觴自ら對し、鹿豕を群と為す。 彼の世態の炎涼に任せ、他の人情の反覆に從ふ。
現代語訳
琴と杯を自分の相手とし、鹿や猪を仲間とします。世の中の熱くなったり冷たくなったりする移り変わりは成り行きにまかせ、人の心が手のひらを返すように変わるのも、好きにさせておきます。
解説
山中に引きこもり、世間の風向きに心を乱されない境地を詠んだ一則です。前半は琴と酒を友とし、鹿や猪と群れる暮らしぶりを描きます。鹿豕為群は、『孟子』尽心上で舜が深山に住んだときのさまとして語られる言葉です。後半の炎涼は、勢いのある人には熱く寄りつき、落ち目の人には冷たくなる世の態度のことで、反覆は人情が裏返ることです。任彼と従他はどちらも、放っておくという意味です。他人の評価や態度の変化に振り回されそうなときこそ、自分の楽しみを持っている人は強いものです。
この章句が説くこと
処世隠逸炎涼人情閑適
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集豪・世態の炎涼に當たり起たず山水の好景を說き盡くせざれば、但だ沈吟に付す。世態の炎涼に當たり起たざれば、惟だ戶を閉づる有るのみ。
-
『酔古堂剣掃』集素・琴書を以て益友に代ふ茅屋三間、木榻一枕、高香を燒き、苦茗を啜り、數行の書を讀み、懶倦すれば便ち松梧の下に高臥し、或いは科頭にして行吟す。 日常苦茗を以て肉食に代へ、松石を以て珍奇に代へ、琴書を以て益友に代へ、著述を以て功業に代ふ、此れ亦た樂事なり。
-
『酔古堂剣掃』集素・落葉を煨きて紅爐と為す山房の磬は、綠玉に非ずと雖も、沉明輕清の韻、盡く清歌を節し俗耳を洗ふべし。 山居の樂しみ、頗る冷趣に愜ふ。落葉を煨きて紅爐と為し、況んや暄を岩戶に負ふをや。 土鼓梅を催し、荻灰地を暖む。潛凜以て蕭索たりと雖も、素柯の歲を凌ぐを見る。 同雲流れず、舞雪醉ふが如し。野は曠きに因りて冷やかに舒び、山は靜かなるを以て晦からず。 枯魚懸かる在り、濁酒已に注ぐ。朋徒我に從ひ、寒盟固むべし。 歲暮を天涯に驚かず、即ち是れ纊を孤嶼に挾むなり。
-
『酔古堂剣掃』集靈・談ずる所は浮生の閒話累月獨り處り、一室蕭條たり。雲霞を取りて伴侶と為し、青松を引きて心知と為す。或いは稚子老翁、閒中に來り過ぎれば、濁酒一壺、蹲鴟一盂、相共に笑口を開き、談ずる所は浮生の閒話、絕えて市朝に及ばず。客去れば門を關ざし、了に報謝無し、是の如くして餘生を畢へなば足れり。
-
『酔古堂剣掃』集韻・理亂を聞かざるに置く外慕を屏絕し、長林に偃息し、理亂を聞かざるに置き、清閑に托して自ら佚す。松軒竹塢、酒甕茶鐺、山月溪雲、農蓑漁罟。
-
『酔古堂剣掃』集靈・名を一時に藏し千古を尚友す跡を塵中に混じへ、視を物外に高くす。情を杯酒に陶し、興を篇詠に寄す。名を一時に藏し、千古を尚友す。