酔古堂剣掃 / 集靈・雁は月に照らされて弦を猜ふ
霜飛空而漫霧,雁照月而猜弦。
書き下し
霜は空に飛びて霧に漫り、雁は月に照らされて弦を猜ふ。
現代語訳
霜は空に舞って霧のように一面に広がり、雁は月に照らされると、その形を弓の弦かと疑って恐れます。
解説
秋の夜の冷たく澄んだ光景を、六朝の賦のような修辞でうたった対句です。前半は、空から降りる霜が霧のようにあたりを覆う様子です。後半の猜弦は、弓張り月を見て、弓の弦ではないかと雁が疑うということです。『戦国策』楚策に見える、弓に傷ついた鳥は弦の音だけで落ちたという話が下地にあると読めます。月の形ひとつにも身構える雁の姿に、秋の夜のもの寂しさと緊張がにじみます。集霊の巻末には、こうした美しい言葉を味わうための句が並びます。一度痛い目にあうと、似たものにまで怯えてしまう人の心にも思い当たるところがあります。
この章句が説くこと
自然秋風雅月恐れ
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