酔古堂剣掃 / 集靈・山の勝は每に人造に壞る
自古及今,山之勝多妙於天成,每壞於人造。
新字:自古及今,山之勝多妙於天成,毎壊於人造。
書き下し
古より今に及ぶまで、山の勝は多く天成に妙にして、每に人造に壞る。
現代語訳
昔から今に至るまで、山の景勝の多くは、自然のままにできあがったところにすばらしさがあり、人の手が加わることで損なわれることがしばしばです。
解説
自然のままの美しさを尊び、人工の手入れの害を戒めた一則です。天成は天が自然に作り上げたもの、人造は人が作ったものです。名勝に寺や楼閣、道や看板が次々と加えられて、かえって趣が失われるのは、今日の観光地でもよく見られることです。この句は山について言っていますが、ものづくりや組織にも通じます。うまく働いているものに、良かれと思って余計な手を加え、本来の良さを壊してしまうことがあります。足すことよりも、損なわないことを先に考える慎みを教えてくれます。
この章句が説くこと
自然風雅無為景観節度
関連する章句
-
老子・第29章将に天下を取りて之を為さんと欲するも、吾れ其の已むを得ざるを見る。天下は神器なり、為すべからざるなり、執るべからざるなり。為す者は之を敗り、執る者は之を失う。故に物は或いは行き或いは随い、或いは歔き或いは吹き、或いは強く或いは羸く、或いは挫け或いは隳る。是を以て聖人は甚を去り、奢を去り、泰を去る。
-
論語・衛霊公篇孔子曰わく、無為にして治むる者は、その舜なるか。夫れ何をか為さん。己を恭しくして南面するのみ。
-
老子・第37章道は常に無為にして而も為さざる無し。侯王若し能く之を守らば、万物は将に自ら化せんとす。化して作らんと欲すれば、吾れ将に之を鎮むるに無名の樸を以てせんとす。無名の樸は、夫れ亦た将に欲無からんとす。欲せずして以て静かなれば、天下は将に自ら定まらんとす。
-
説苑・君道晋の平公、師曠に問いて曰く、「人君の道は如何」と。対えて曰く、「人君の道は、清浄無為、務めて博愛にあり、趨りて賢を任ずるにあり、広く耳目を開きて以て万方を察し、流俗に固溺せず、左右に拘繋せられず、廓然として遠く見、踔然として独立し、屡々考績を省みて、以て臣下に臨む。此れ人君の操なり」と。平公曰く、「善し」と。
-
説苑・君道斉の宣王、尹文に謂いて曰く、「人君の事は何如」と。尹文対えて曰く、「人君の事は、無為にして能く下を容る。夫れ事寡なければ従い易く、法省ければ因り易し、故に民は政を以て罪を獲ず。大道は衆を容れ、大徳は下を容れ、聖人は寡為にして天下理まる。書に曰く、『睿は聖を作す』と。詩人曰く、『岐に夷の行有り、子孫其れ之を保たん』と」と。宣王曰く、「善し」と。
-
論語・陽貨篇子曰く、飽食終日、心を用うる所無きは、難いかな。博弈なる者有らずや。之を為すは、猶お已むに賢れり。