酔古堂剣掃 / 集靈・一言を出だして之を解救す
士君子貧不能濟物者,遇人癡迷處,出一言提醒之;遇人急難處,出一言解救之,亦是無量功德。
新字:士君子貧不能済物者,遇人痴迷処,出一言提醒之;遇人急難処,出一言解救之,亦是無量功徳。
書き下し
士君子の貧にして物を濟ふ能はざる者も、人の癡迷の處に遇はば、一言を出だして之を提醒し、人の急難の處に遇はば、一言を出だして之を解救せば、亦た是れ無量の功德なり。
現代語訳
立派な人物で、貧しくて財物で人を救うことのできない者でも、人が愚かに迷っているところに出会えば一言かけて目を覚まさせ、人が差し迫った難儀にあっているところに出会えば一言かけて救ってやるなら、それもまた計り知れない功徳です。
解説
お金がなくても人を助ける道はあると説いた一則です。済物は財物で人を救うこと、提醒は注意を促して目を覚まさせること、解救は困難から救い出すことです。無量功徳は仏教の言葉で、はかりしれない善行の報いを言います。菜根譚にもほぼ同じ句があります。人助けというと寄付や援助を思い浮かべがちですが、迷っている人への的確な助言や、窮地にある人へのひと声が、ときに何よりの支えになります。立場や資力がなくても、言葉ひとつで誰かの力になれることを思い出させてくれます。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
功徳言葉処世仁菜根譚
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集法・一言を出だして之を提醒す土君子貧にして物を濟ふこと能はざる者も、人の癡迷する處に遇へば、一言を出だして之を提醒し、人の急難の處に遇へば、一言を出だして之を解救す、亦た是れ無量の功德なり。
-
『家道訓』巻之六・用財下一ことばの情のみにて物を与へざれば、婦人の仁とて、実事なければ人まことをつくさず、功をなしがたし。軍をするにも、言の情ばかりにて禄を与へざれば、士卒の戦功なし。然れども、財禄を与ふるにも法あり。みだりに功なきに与ふれば、千金を与へても人よろこばず、又一言の情も千金にまさることあり。
-
『文武訓』文訓上之末一人の文字を見ば、よきことは褒め、さほどなきは、かげにてもそしるべからず。人のつとめて作れる文字を、一言にたやすくそしりおとさんもなさけなし。作れる人、そしりを聞かば、本意なく思ひうらみいかるべし。是をそしるは不仁無礼にて、道理にそむくのみならず、人のうらみを受けて悪しし。又あしき文詩を褒むるも、いつはりにて本意にあらず。只其よしあしを云はざらんには如かじ。
-
『酔古堂剣掃』集韻・益語を聞けば金を贈らるるが如し暖語を聞けば纊を挾むが如く、冷語を聞けば冰を飲むが如く、重語を聞けば山を負ふが如く、危語を聞けば卵を壓するが如く、溫語を聞けば玉を佩ぶるが如く、益語を聞けば金を贈らるるが如し。
-
『酔古堂剣掃』集法・怒る時の言は多く體を失ふ喜ぶ時の言は多く信を失ひ、怒る時の言は多く體を失ふ。
-
『酔古堂剣掃』集醒・口を開けば雌黃月旦の言を生ず口を開けば輒ち雌黃・月旦の言を生ず、吾れ微言の將に絕えんとするを恐る。 筆を捉れば便ち繽紛綺麗の飾に驚く、當に是れ妙處傳はらざるべし。