酔古堂剣掃 / 集靈・都て其の恚りを忘る
李納性辨急,酷尚奕棋,每下子,安詳極於寬緩。有時躁怒,家人輩則密以棋具陳於前,納睹便欣然改容,取子布算,都忘其恚。
新字:李納性弁急,酷尚奕棋,毎下子,安詳極於寛緩。有時躁怒,家人輩則密以棋具陳於前,納睹便欣然改容,取子布算,都忘其恚。
書き下し
李納は性辨急にして、酷だ奕棋を尚ぶ、子を下す每に、安詳にして寬緩を極む。時有りて躁怒すれば、家人の輩則ち密かに棋具を以て前に陳ぬ、納睹れば便ち欣然として容を改め、子を取りて算を布き、都て其の恚りを忘る。
現代語訳
李納(唐の節度使)はせっかちな性分でしたが、碁をたいへん好み、石を打つたびに落ち着き払って、このうえなくゆったりしていました。ときどきいらだって怒り出すと、家の者たちはこっそり碁盤と碁石を彼の前に並べました。李納はそれを見るとすぐに機嫌を直して顔つきを和らげ、石を取って盤上に並べ、怒りをすっかり忘れてしまうのでした。
解説
短気な人の怒りを、好きなものでなだめたという逸話です。李納は唐の中ごろ、山東の地を治めた節度使です。辨急は褊急のことで、気短でせっかちなことをいいます。奕棋は碁、恚りは怒りです。ふだんはせっかちなのに、碁を打つときだけは落ち着いてゆったりしているという性格の対比が面白く、家の者がそれを心得て、怒ったときに碁盤を差し出す機転もほほえましいものです。人は夢中になれるものに向かうと、心が落ち着きます。自分が怒りっぽくなったとき、気持ちを切り替えてくれる好きなものを知っておくと、心の手当てになります。
この章句が説くこと
怒り心趣味故事家庭
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