酔古堂剣掃 / 集靈・利刀もて水を割けば痕を留めず
彩筆描空,筆不落色,而空亦不受染;利刀割水,刀不損鍔,而水亦不留痕。
書き下し
彩筆もて空を描けば、筆色を落さず、而して空も亦た染を受けず。利刀もて水を割けば、刀鍔を損はず、而して水も亦た痕を留めず。
現代語訳
絵筆で空を描いても、筆は色を落とさず、空もまた染まりません。鋭い刀で水を切っても、刀の刃は傷まず、水もまた跡を残しません。
解説
物事に触れても心にとどめない、とらわれのない心の働きを描いた一則です。彩筆は色を付けた絵筆、鍔はここでは刀の刃のことです。空に絵を描こうとしても空は染まらず、水を刀で切っても水には跡が残らない。どちらも、ものが触れ合っても互いに傷つかず、何も残さないという姿です。これは、物事に応じても執着を残さない心のたとえで、菜根譚の、風が竹林を過ぎれば音を残さず、雁が淵を渡れば影を留めない、という句にも通じる考え方です。嫌なことを言われても、心に傷を残さずに受け流す。仕事の失敗も、反省したら引きずらない。そんなしなやかな心を持ちたいものです。
この章句が説くこと
無心執着禅修身処世
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