酔古堂剣掃 / 集靈・淡宕なるが故なり
人有一字不識,而多詩意;一偈不參,而多禪意;一勺不濡,而多酒意;一石不曉,而多畫意;淡宕故也。
新字:人有一字不識,而多詩意;一偈不参,而多禅意;一勺不濡,而多酒意;一石不暁,而多画意;淡宕故也。
書き下し
人に一字も識らずして、詩意多き有り。一偈も參ぜずして、禪意多く、一勺も濡さずして、酒意多く、一石も曉らずして、畫意多し。淡宕なるが故なり。
現代語訳
一字も知らないのに詩の心に富んだ人がいます。一つの偈も参究していないのに禅の心に富み、一杯の酒も口にしないのに酒の趣に富み、石一つの描き方も知らないのに絵の心に富んでいる。それは心があっさりとしてのびやかだからです。
解説
技術や知識がなくても、心のあり方ひとつで詩や禅や酒や画の趣は得られる、と言う一則です。偈は仏の教えや悟りを詩の形で述べたもの、參は禅でそれを工夫し参究することです。一勺不濡は酒を一滴も口にしないこと、一石不曉は画の基本である石の描き方も知らないことです。淡宕は淡泊でこだわりがなく、のびのびとしていることを言います。形式を身につけていても心が濁っていれば趣は出ず、心が澄んでいれば素人のままでも趣がにじみ出るというのです。何かを始めるときに、まず道具や知識をそろえることばかり考えがちな私たちに、心の持ち方の大切さを思い出させてくれます。
この章句が説くこと
風雅禅詩淡泊心境
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