酔古堂剣掃 / 集靈・偶たま淮陰に飯す
偶飯淮陰,定萬古英雄之眼;醉題便殿,生千秋風雅之光。
新字:偶飯淮陰,定万古英雄之眼;酔題便殿,生千秋風雅之光。
書き下し
偶たま淮陰に飯せしめて、萬古英雄の眼を定め、醉ひて便殿に題して、千秋風雅の光を生ず。
現代語訳
たまたま淮陰の若者(のちの韓信)に飯を食べさせたことで、万古に英雄を見抜いた眼と定まり、酔って宮殿の脇殿で詩を書きつけたことで、千年に輝く風雅の光を生みました。
解説
歴史上の二つの逸話を対にした一則です。前半は、漢の名将韓信がまだ貧しかった頃、故郷の淮陰で川で布をさらす老婆が哀れんで食事を与え、のちに韓信がその恩に千金で報いたという史記の話です。何気ない施しが、英雄を見抜いた眼として永遠に語られることになりました。後半は、唐の李白が酔ったまま宮中に召されて詩を作ったという話を指すと思われ、酔中の一作が千年の風雅の光となったというのです。便殿は正殿の脇にある御殿です。どちらも、偶然のひとこまが永く語り継がれるという点で共通しています。日々の小さな親切や、ふとした一作が、思いがけず大きな意味を持つことがあるのです。
この章句が説くこと
歴史英雄風雅恩義識見
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