酔古堂剣掃 / 集靈・酒氣拂拂として十指より出づ
醉後輒作草書十數行,便覺酒氣拂拂,從十指出也。
新字:酔後輒作草書十数行,便覚酒気払払,従十指出也。
書き下し
醉ひて後輒ち草書十數行を作れば、便ち酒氣の拂拂として、十指より出づるを覺ゆ。
現代語訳
酔ったあとで草書を十数行書くと、すぐに酒の気がふわふわと十本の指先から出ていくように感じられます。
解説
酔いの勢いを筆に移す、書家の感覚をとらえた一則です。草書は字画を大きく崩して速く書く書体で、心の動きがそのまま線に表れます。唐の張旭や懐素は酒に酔って草書を書き、その奔放な筆で名を残しました。拂拂は気がふわりと立ちのぼる様子で、体にこもった酒気が指先から紙の上へ抜けていくように感じると言います。酔いを暴言や乱れで発散するのではなく、筆墨の表現に変えてしまうところに、文人の品のよい遊びがあります。高ぶった気持ちや持て余す感情を、書く、描く、奏でるといった形で外に出すことは、今でも心を整える良い方法です。
この章句が説くこと
風雅書道飲酒表現閑適
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