酔古堂剣掃 / 集靈・讀書は終身盡くる無し
萬事皆易滿足,惟讀書終身無盡;人何不以不知足一念加之書。又云:讀書如服藥,藥多力自行。
新字:万事皆易満足,惟読書終身無尽;人何不以不知足一念加之書。又云:読書如服薬,薬多力自行。
書き下し
萬事皆滿足し易し、惟だ讀書のみ終身盡くる無し。人何ぞ足るを知らざるの一念を以て之を書に加へざる。又云ふ、書を讀むは藥を服するが如し、藥多ければ力自ら行はる、と。
現代語訳
何事もみな満足しやすいものですが、ただ読書だけは一生かけても尽きることがありません。人はどうして、足ることを知らないという思いを書物に向けないのでしょうか。またこうも言います。読書は薬を飲むようなもので、薬が多ければ効き目はおのずから現れるのだ、と。
解説
欲の向け先を書物に変えよと勧める一則です。知足は老子以来、満足を知ることとして尊ばれてきましたが、ここでは逆に、足ることを知らない一念を読書にだけは向けよと言います。財産や地位への欲は際限なく人を苦しめますが、学ぶことへの欲は人を豊かにします。後半は読書を薬にたとえ、読む量が積み重なるとやがて自然に力になると言います。一冊ですぐに変わらなくても、読み続けることで考え方や言葉がいつの間にか変わっていきます。物への欲を少し減らし、その分を学びに回すことが、生涯続けられる楽しみを育てます。
この章句が説くこと
読書学問知足立志修身
関連する章句
-
人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
-
言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
-
言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
-
歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
-
論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
-
説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。