酔古堂剣掃 / 集靈・必ず出世する者は方に能く入世す
必出世者,方能入世,不則世緣易墮;必入世者,方能出世,不則空趣難持。
新字:必出世者,方能入世,不則世縁易堕;必入世者,方能出世,不則空趣難持。
書き下し
必ず世を出づる者にして、方に能く世に入る、不らざれば則ち世緣墮ち易し。必ず世に入る者にして、方に能く世を出づ、不らざれば則ち空趣持し難し。
現代語訳
必ず世俗を超えた心を持つ者であってこそ、世の中に入って働くことができます。そうでなければ世の縁に引きずられて堕ちやすくなります。必ず世の中に入って働いた者であってこそ、世俗を超えることができます。そうでなければ空の境地を保つのは難しいのです。
解説
出世と入世、つまり世を離れることと世に交わることは、たがいに支え合うと説く対句です。世俗を超えた心を持たずに世の中へ入れば、利害や人間関係に巻き込まれて自分を見失います。逆に、世の中で苦労したことのない人が世を離れても、その悟りは頭の中だけのもので、すぐに崩れてしまいます。世緣は世間とのつながり、空趣は仏教でいう空の境地の趣です。不則は否則と同じで、そうでなければという意味です。組織の中で働きながらも一歩引いた視点を持ち、趣味や休息の時間を持ちながらも社会との関わりを失わない、という釣り合いの取り方を教えてくれます。
この章句が説くこと
処世仏教出世入世中庸
関連する章句
-
孟子・離婁章句下孟子曰く、「仲尼は已甚だしきを為さざる者なり。」
-
孟子・盡心章句上孟子曰く、「楊子は我が為にするを取る。一毛を抜きて天下を利するも、為さざるなり。墨子は兼愛す。頂を摩し踵に放るも、天下を利するは之を為す。子莫は中を執る。中を執るは之に近しと為すも、中を執りて權すること無ければ、猶ほ一を執るなり。一を執るに惡む所の者は、其の、道を賊うが為なり。一を舉げて百を廢すればなり。」
-
論語・先進篇子貢問う、「師と商とは孰れか賢れる。」子曰く、「師や過ぎたり、商や及ばず。」曰く、「然らば則ち師愈れるか。」子曰く、「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし。」
-
孟子・公孫丑章句上孟子曰く、「伯夷は其の君に非ざれば事えず。其の友に非ざれば友とせず。惡人の朝に立たず。惡人と言(ものいう)わず。惡人の朝に立ち、惡人と言うは、朝衣朝冠を以て塗炭に坐するが如し。惡を惡むの心を推すに、ᰰ人と立ちて、其の冠正しからざれば、望望然として之を去り、將に浼(けがす)されんとするが若く思う。是の故に諸侯其の辭命を善くして至る者有りと雖も、受けざるなり。受けざる者は、是れも亦た就くを屑しとせざるのみ。柳下惠は汙君を羞ぢず、小官を卑しとせず。進んで賢を隱さず、必ず其の道を以てす。遺佚せられて怨みず、阨窮して憫えず。故に曰く、『爾は爾為り、我は我為り。我が側に袒裼裸裎すと雖も、爾焉くんぞ能く我を浼さんや。』故に由由然として之と偕にして自ら失わず。援(ひく)いて之を止むれば止まる。援いて之を止むれば止まる者は、是れ亦た去るを屑しとせざるのみ。」孟子曰く、「伯夷は隘なり。柳下惠は不恭なり。隘と不恭とは、君子由らざるなり。」
-
論語・雍也篇子曰わく、中庸の徳たるや、その至れるかな!民、鮮(すくな)きこと久し。
-
尚書・蔡仲之命小民を康濟するに、率ね中よりし、聰明を作して舊章を亂すこと無かれ。