酔古堂剣掃 / 集靈・史を讀むには訛字に耐ふるを要す
讀史要耐訛字,正如登山耐仄路,蹈雪耐危橋,閒居耐俗漢,看花耐惡酒,此方得力。
新字:読史要耐訛字,正如登山耐仄路,蹈雪耐危橋,閒居耐俗漢,看花耐悪酒,此方得力。
書き下し
史を讀むには訛字に耐ふるを要す、正に山に登りて仄路に耐へ、雪を蹈みて危橋に耐へ、閒居して俗漢に耐へ、花を看て惡酒に耐ふるが如くして、此れ方に力を得。
現代語訳
歴史書を読むには誤字に耐えることが必要です。ちょうど山に登って険しい細道に耐え、雪を踏んで危ない橋に耐え、閑居して俗な男に耐え、花見でまずい酒に耐えるのと同じで、そうしてはじめて得るところがあります。
解説
楽しみには付きものの不快があり、それに耐えてこそ実りがある、と説く一則です。昔の史書は写本や版木を重ねるうちに誤字が多くなり、読みにくいものでした。それにいちいち腹を立てていては、肝心の史実を味わえません。編者は、山道の険しさ、雪の日の危うい橋、閑居に訪れる俗人、花見のまずい酒をたとえに重ねます。どれも良いものを得るために我慢すべき小さな不都合です。得力は効き目が出る、身につくという意味です。仕事でも趣味でも、完璧な条件を待っていては何も始まりません。多少の欠点を受け流す度量が、深い楽しみに近づく道だと教えています。
この章句が説くこと
読書忍学問寛容歴史
関連する章句
-
人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
-
言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
-
言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
-
歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
-
論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
-
説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。