酔古堂剣掃 / 集靈・名山勝景に一たび登臨す
聲色娛情,何若淨幾明窗,一坐息頃;利榮馳念,何若名山勝景,一登臨時。
新字:声色娯情,何若浄幾明窗,一坐息頃;利栄馳念,何若名山勝景,一登臨時。
書き下し
聲色情を娛しましむるは、何ぞ淨幾明窗に、一たび坐して息ふ頃に若かん。利榮念を馳するは、何ぞ名山勝景に、一たび登臨する時に若かん。
現代語訳
歌や色事で心を楽しませるのは、清らかな机と明るい窓辺にしばらく座って休むひとときに、どうして及びましょうか。利益や栄達に思いを馳せるのは、名高い山やすばらしい景色に一度登って眺めるときに、どうして及びましょうか。
解説
世俗の楽しみと、静かで清らかな楽しみとを比べた一則です。聲色は音楽と女色、つまり華やかな遊びのことです。淨幾明窗は、きれいに片づいた机と明るい窓で、文人が理想とした書斎の姿です。利榮は利益と栄誉、馳するは思いを駆けめぐらせることです。登臨は高いところに登って景色を見下ろすことです。刺激の強い楽しみや、出世への思いは心を落ち着かなくさせますが、静かな書斎で過ごすひとときや、山に登って広い景色を眺める時間は、心を澄ませ満たしてくれます。忙しい日々の中で、何もしない静かな時間や、遠くを眺める時間を意識して持ちたいものです。
この章句が説くこと
閑適清心名利自然書斎
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