酔古堂剣掃 / 集醒・常に泉下の光景を思ふ
仕途雖赫奕,常思林下的風味,則權勢之念自輕;世途雖紛華,常思泉下的光景,則利欲之心自淡。
新字:仕途雖赫奕,常思林下的風味,則権勢之念自軽;世途雖紛華,常思泉下的光景,則利欲之心自淡。
書き下し
仕途は赫奕たりと雖も、常に林下の風味を思へば、則ち權勢の念自ら輕し。世途は紛華たりと雖も、常に泉下の光景を思へば、則ち利欲の心自ら淡し。
現代語訳
官職の道がどれほど輝かしくても、いつも山林に隠れ住む暮らしの味わいを思っていれば、権勢を求める気持ちは自然と軽くなります。世の中の道がどれほど華やかでも、いつも死後のあの世の光景を思っていれば、利益や欲望を求める心は自然と淡くなります。
解説
栄達や繁華のただ中にあって、心を冷ます二つの視点を示した対句です。赫奕は光り輝くさま、林下は官を退いて山林に住むこと、泉下は黄泉の下、つまり死後の世界です。出世の道を歩んでいるときに引退後の暮らしを思えば、権力への執着は薄れます。華やかな世の中にいるときに死を思えば、欲望への執着は薄れます。どちらも、今の自分を少し先の地点から眺め直す工夫です。成功や忙しさの渦中にいると、その価値が絶対に思えてしまいます。いずれ役職を離れる日、人生を終える日を思い浮かべてみると、本当に大切なものと、実はどうでもよいものとが見分けやすくなるのではないでしょうか。
この章句が説くこと
名利無常澹泊処世隠逸
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