酔古堂剣掃 / 集峭・艷麗を談じて風人の遺を補ふ
論官府不如論帝王,以佐史臣之不逮;談閨閫不如談艷麗,以補風人之見遺。
新字:論官府不如論帝王,以佐史臣之不逮;談閨閫不如談艶麗,以補風人之見遺。
書き下し
官府を論ずるは帝王を論ずるに如かず、以て史臣の逮ばざるを佐く。閨閫を談ずるは艷麗を談ずるに如かず、以て風人の遺さるるを補ふ。
現代語訳
役所のことを論じるより、帝王のことを論じるほうがよく、それによって歴史家の手の届かないところを助けることができます。奥向きの家庭のことを語るより、美しく華やかなことを語るほうがよく、それによって詩人が書き漏らしたものを補うことができます。
解説
論じ、語るなら、細かく狭いことより、大きく美しいことを選べという一則です。官府は役所、史臣は歴史を記す役人、閨閫は女性の住む奥の部屋、つまり家庭内のことです。風人は詩経の国風を作った人々、つまり詩人のことです。役所の小さな噂話や家庭の内輪の話をするより、国の大きな流れや、人の心を打つ美しいものを語るほうが、世に役立ち、文学を豊かにするというのです。会話の話題も同じで、人の噂や身内の愚痴ばかりでは、得るものがありません。どうせ語るなら、大きな視野や美しいものについて語りたいものです。
この章句が説くこと
見識話題文学歴史処世
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集倩・詩に方言を用ふ詩に方言を用ふるは、豈に是れ采風の子ならんや。 談ずること徘語に鄰すれば、恐らくは拂麈の羞を貽さん。
-
『酔古堂剣掃』集倩・徑中には竹を須つ山上には泉を須ち、徑中には竹を須つ。 史を讀むには酒を幹くべからず、禪を談ずるには美人無かるべからず。
-
『酔古堂剣掃』集法・隱德を種うるに如かず私恩を市るは、公議を扶くるに如かず。新知を結ぶは、舊好を敦くするに如かず。榮名を立つるは、隱德を種うるに如かず。奇節を尚ぶは、庸行を謹むに如かず。
-
『酔古堂剣掃』集素・雅士の高盟は詩を題し翰を揮ふに在らず幽人の清課は、詎ぞ但だ茗を啜り香を焚くのみならんや。 雅士の高盟は、詩を題し翰を揮ふに在らず。
-
『酔古堂剣掃』集豪・襟懷は疏朗を貴ぶ襟懷は疏朗を貴ぶも、太だ豪華を逞しくするに宜しからず。文字は雄奇を要するも、故らに寂寞を求むるに宜しからず。
-
『酔古堂剣掃』集醒・口を開けば雌黃月旦の言を生ず口を開けば輒ち雌黃・月旦の言を生ず、吾れ微言の將に絕えんとするを恐る。 筆を捉れば便ち繽紛綺麗の飾に驚く、當に是れ妙處傳はらざるべし。