酔古堂剣掃 / 集峭・好景に詩無し
名山乏侶,不解壁上芒鞋;好景無詩,虛攜囊中錦字。
新字:名山乏侶,不解壁上芒鞋;好景無詩,虚攜嚢中錦字。
書き下し
名山に侶乏しければ、壁上の芒鞋を解かず、好景に詩無ければ、虛しく囊中の錦字を攜ふ。
現代語訳
名山に登ろうにも連れがいなければ、壁に掛けた草鞋をほどく気にもなれず、よい景色を前にしても詩ができなければ、袋の中の美しい詩句の書きつけをむなしく持ち歩くばかりです。
解説
旅の楽しみには、良い連れと詩心の両方が要るという一則です。芒鞋は草で編んだわらじで、壁に掛けたままほどかないとは、旅に出ないことをいいます。囊中の錦字は、唐の李賀が驢馬に乗って出歩き、思いついた句を錦の袋に入れて帰ったという話を踏まえ、詩の材料を入れた袋のことです。すばらしい場所も、共に喜ぶ人がいなければ行く気が起きず、すばらしい景色も、それを受け止める言葉がなければ素通りしてしまいます。体験を豊かにするのは、場所そのものより、共にいる人と、感じたことを言葉にする力なのでしょう。
この章句が説くこと
旅交友詩風雅感受性
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