酔古堂剣掃 / 集峭・客途に雁に驚く
旅館題蕉,一路留來魂夢譜;客途驚雁,半天寄落別離書。
新字:旅館題蕉,一路留来魂夢譜;客途驚雁,半天寄落別離書。
書き下し
旅館に蕉に題し、一路留め來る魂夢の譜、客途に雁に驚き、半天より寄せ落す別離の書。
現代語訳
旅の宿で芭蕉の葉に詩を書きつけ、道々書き残してきたのは、夢に見た思いを綴った歌の数々です。旅の途中で雁の声にはっとすると、空の中ほどから、別れを嘆く手紙が落ちてくるかのようです。
解説
旅の寂しさと、遠く離れた人への思いを描いた対句です。蕉に題すは、紙のない者が芭蕉の葉に字や詩を書いた故事を思わせ、唐の懐素が芭蕉の葉で書を練習した話が知られています。魂夢の譜は、夢の中で思った人への思いを綴った詩です。雁は、漢の蘇武が匈奴に捕らわれたとき、雁の足に手紙を結んで無事を伝えたという話から、便りを運ぶ鳥とされています。旅先で書き残す言葉も、空を渡る雁も、すべて離れた人へと向かう心の表れです。離れていても、手紙や言葉がつなぐ関係があります。遠くの人に一通便りを出してみたくなる句です。
この章句が説くこと
旅別離情手紙郷愁
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