酔古堂剣掃 / 集峭・盤に水晶鹽有れば客を留むるに堪ふ
囊無阿堵物,豈便求人;盤有水晶鹽,猶堪留客。
新字:嚢無阿堵物,豈便求人;盤有水晶塩,猶堪留客。
書き下し
囊に阿堵物無きも、豈に便ち人に求めんや、盤に水晶鹽有れば、猶ほ客を留むるに堪ふ。
現代語訳
財布にお金がなくても、どうしてすぐに人に頼んだりしましょうか。皿に透き通った塩さえあれば、それでも客を引きとめてもてなすことができます。
解説
清貧の中にある誇りと、もてなしの心を詠んだ対句です。阿堵物は銭のことで、晋の王衍が銭という言葉を口にするのを嫌い、召し使いが寝台の周りに銭を並べると、この物をどけよと言ったという世説新語の話から生まれた言い方です。水晶鹽は水晶のように澄んだ塩で、粗末な食事の象徴です。お金がなくても人にすがらず、あるものだけで精一杯もてなすというところに、気骨と温かさが同居しています。もてなしの真心は、料理の豪華さではなく、迎える人の心にあります。手持ちが少ないときでも、人を大切にする気持ちは誰にでも差し出せるものです。
この章句が説くこと
清貧気骨交友もてなし自立
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集素・主の榮と客の辱明月人に可く、清風坐を披き、荊を班き水を問ふは、天涯の韻士高人なり。 箸を下し觴を佐くるは、品外の澗毛溪蔌、主の榮なり。 高軒寒戶にし、肥馬門に嘶き、酒を命じ茶を呼び、聲勢神を驚かし鬼を震はす。 筵を疊ね几を累ね、珍奇地を罄し天を窮むるは、客の辱なり。
-
『酔古堂剣掃』集素・客を待つは潔くして侈らず客を待つは當に潔くすべく、當に侈るべからず。 繼ぐ能はざるを論ずる無く、亦た福を惜しむ所以に非ず。
-
『酔古堂剣掃』集素・大賓と雖も牲を宰らず親にも飯を抬げず、大賓と雖も牲を宰らず。 直だに奢侈を戒めて久しかるべきのみに匪ず、亦た將に煩勞を免れて以て身を安んぜんとす。
-
『酔古堂剣掃』集素・白雲も亦た客に贈るべし鄙吝一たび銷ゆれば、白雲も亦た客に贈るべし。 渣滓盡く化すれば、明月自ら來りて人を照らす。
-
『酔古堂剣掃』集醒・半瓢の粟を傾けて飢餓を濟ふ千金を費して賢豪に結納するは、孰れか半瓢の粟を傾けて以て飢餓を濟ふに若かん。千楹を構へて賓客を招徠するは、孰れか數椽の茅を葺きて以て孤寒を庇ふに若かん。
-
『酔古堂剣掃』集靈・窮して書を買ふ能はずして奇書を讀むを好む貧にして客を享する能はずして、客を結ぶを好む。老いて世に徇ふ能はずして、世を維ぐを好む。窮して書を買ふ能はずして、奇書を讀むを好む。