酔古堂剣掃 / 集峭・臥して離騷を讀みて淚下る
秋風閉戶,夜雨挑燈,臥讀離騷淚下;霽日尋芳,春宵載酒,閒歌樂府神怡。
新字:秋風閉戸,夜雨挑灯,臥読離騷涙下;霽日尋芳,春宵載酒,閒歌楽府神怡。
書き下し
秋風に戶を閉ぢ、夜雨に燈を挑げ、臥して離騷を讀みて淚下り;霽日に芳を尋ね、春宵に酒を載せ、閒かに樂府を歌ひて神怡ぶ。
現代語訳
秋風の吹く日には戸を閉ざし、夜の雨には灯火の芯をかき立て、寝ころんで『離騒』を読んでは涙を流します。晴れた日には花を訪ね歩き、春の宵には酒を携えて、のんびりと楽府を歌って心を楽しませます。
解説
季節と天気に応じた読書と遊びの楽しみを、悲しみと喜びの対で描いた一則です。離騒は戦国時代の楚の屈原の長詩で、忠誠を尽くしながら讒言によって退けられた憂憤を歌い、古来、志ある人が涙して読んできた作品です。挑燈は灯芯をかき立てて明るくすることです。樂府はもと漢の音楽を司る役所の名で、そこで集められた民間の歌謡や、それに倣った歌を指します。秋の雨の夜には悲憤の詩に心を寄せて涙を流し、春の晴れた日には明るい歌で心を晴らす、という感情の起伏そのものを味わう姿勢があります。季節や気分に合わせて読む本を選ぶのも、豊かな読書の楽しみ方です。
この章句が説くこと
読書離騒楽府季節風雅
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集韻・春夜は宜しく苦吟すべし春夜は宜しく苦吟すべし、宜しく香を焚きて書を讀むべし、宜しく老僧と法を說き、以て艷思を銷すべし。夏夜は宜しく閑談すべし、宜しく水に臨みて枯坐すべし、宜しく松聲冷韻を聽き、以て煩襟を滌ふべし。秋夜は宜しく豪遊すべし、宜しく快士を訪ふべし、宜しく兵を談じ劍を說き、以て蕭瑟を除くべし。冬夜は宜しく茗戰すべし、宜しく酒を酌みて『三國』、『水滸』、『金瓶梅』の諸集を說くべし、宜しく竹肉に箸すべし、以て孤岑を破るべし。
-
『酔古堂剣掃』集素・細雨閒かに卷を開く細雨閒かに卷を開き、微風獨り琴を弄す。
-
『酔古堂剣掃』集素・風雨瀟瀟を聞く秋冬の交、夜靜かに獨り坐し、每に風雨の瀟瀟たるを聞けば、既に淒然として愁ふべく、亦た復た悠然として喜ぶべし。 酒醒め燈昏きの際に至りては、尤も懷ひを為し難し。
-
『酔古堂剣掃』集素・燈下に花を玩び簾內に月を看る燈下に花を玩び、簾內に月を看、雨後に景を觀、醉裏に詩を題し、夢中に書聲を聞く、皆別趣有り。
-
『酔古堂剣掃』集靈・詩卷を快讀して以て之を咽む鳥啼き花落ち、欣然として心に會する有り。小奴を遣はし、癭樽を挈げ、白酒を酤ひ、一梨花瓷の盞を釂す。急ぎ詩卷を取り、快讀すること一過にして以て之を咽み、蕭然として其の塵埃の間に在るを知らざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集景・兩腋に風を生ずるを覺ゆ盛暑に蒲を持ち、榻を竹下に鋪き、臥して騷經を讀めば、樹影風を篩ひ、濃陰日を蔽ひ、叢竹の蟬聲、遠遠として相續き、蘧然として夢に入る。 醒め來りて命じて榐を取りて發を櫛らしめ、石澗の流泉を汲み、雲芽を烹て一啜すれば、兩腋に風を生ずるを覺ゆ。 徐ろに草玄亭に步めば、芰荷水を出で、風清香を送り、魚冷泉に戲れ、波を淩ぎて跳擲す。 因りて東臯の上に涉り、四もに溪山の罨畫、平野の蒼翠を望む。 激氣林瀑より發し、好風之を水涯に送り、手に麈尾を揮へば、清興酒然たり。 法雨涼雪を待たずして、人をして火宅の念都て冷やかならしむ。