酔古堂剣掃 / 集峭・君子は恬を以て智を養ふ
伺察以為明者,常因明而生暗,故君子以恬養智;奮迅以求速者,多因速而致遲,故君子以重持輕。
新字:伺察以為明者,常因明而生暗,故君子以恬養智;奮迅以求速者,多因速而致遅,故君子以重持軽。
書き下し
伺察して以て明と為す者は、常に明に因りて暗を生ず、故に君子は恬を以て智を養ふ;奮迅して以て速やかなるを求むる者は、多く速やかなるに因りて遲きを致す、故に君子は重を以て輕を持す。
現代語訳
人の様子を探り見ることを聡明だと思う者は、いつもその聡明さのためにかえって物事が見えなくなります。だから君子は心を静かにすることで知恵を養います。勢いよく奮い立って速さを求める者は、多くはその速さのためにかえって遅れを招きます。だから君子は重々しさによって軽はずみを抑えます。
解説
鋭さや速さを求めることの落とし穴を、明と暗、速と遅の逆説で説いた一則です。伺察は人の粗や裏をうかがい探ることで、細かく詮索すればするほど疑心が生じ、かえって大局が見えなくなります。恬は心が静かで安らかなこと、奮迅は激しく奮い立って突き進むことです。急ぐあまり手順を飛ばせば、やり直しでかえって遅くなります。重を以て軽を持すは、落ち着いた重みによって軽率さを制御することです。明を求めて暗に陥り、速を求めて遅を招くという構図は、今の仕事にもそのまま当てはまります。細部を詮索しすぎていないか、焦って拙速になっていないか、自分を点検したくなります。
この章句が説くこと
恬淡慎重知恵処世拙速
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