酔古堂剣掃 / 集峭・枝頭の秋葉猶ほ樹を戀ふ
枝頭秋葉將落,猶然戀樹;簷前野鳥除死,方得離籠。人之處世,可憐如此。
新字:枝頭秋葉将落,猶然恋樹;簷前野鳥除死,方得離籠。人之処世,可憐如此。
書き下し
枝頭の秋葉は將に落ちんとして、猶然として樹を戀ひ;簷前の野鳥は死を除きて、方めて籠を離るるを得。人の世に處する、憐れむべきこと此くの如し。
現代語訳
枝先の秋の葉は今にも落ちようとしているのに、なお木に恋々としてしがみつき、軒先に飼われた野の鳥は、死ぬことによってはじめて籠を離れることができます。人が世に生きるさまも、このように哀れなものです。
解説
手放せない執着と、逃れられない束縛を、落ち葉と籠の鳥で描いた一則です。猶然はなお依然として、の意で、散る間際の葉が木にしがみつくさまは、老いてなお地位や財に執着する人の姿を思わせます。籠の鳥は、官職や世間のしがらみに縛られた身のたとえで、死ぬまでそこから出られないというのです。自分からしがみつく執着と、外から縛られる不自由とが対になっており、どちらも人の哀れさを示しています。作者は冷たく笑うのではなく、可憐、すなわち哀れむべきだと嘆いています。手放すべき時に手放し、抜け出せるうちに抜け出す判断ができているか、自分の身を振り返らせる句です。
この章句が説くこと
執着束縛無常処世自由
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