酔古堂剣掃 / 集情・天若し情有らば天も亦た老いん
黃葉無風自舞,秋雲不雨長陰。天若有情天亦老,搖搖幽恨,難禁惆悵,舊人如夢,覺來無處追尋。
新字:黄葉無風自舞,秋雲不雨長陰。天若有情天亦老,揺揺幽恨,難禁惆悵,旧人如夢,覚来無処追尋。
書き下し
黃葉風無くして自ら舞ひ、秋雲雨ふらずして長く陰る。 天若し情有らば天も亦た老いん、搖搖たる幽恨、惆悵を禁じ難し、舊人は夢の如く、覺め來れば追尋するに處無し。
現代語訳
黄色い落ち葉は風もないのに自ら舞い、秋の雲は雨を降らせもせずにいつまでも空を曇らせています。天にもし情があるなら、天もまた老いてしまうでしょう。揺れ動く胸の奥の恨みに、悲しみを抑えきれません。昔の人は夢のようで、目覚めてみれば追い求めるすべもありません。
解説
秋の景色と、去った人への思いを重ねた、詞の趣のある一則です。風もないのに舞う落ち葉、雨も降らないのに曇り続ける雲は、理由もなく沈んでいく心の姿そのものです。天若有情天亦老は、唐の李賀の詩の一句で、天に心があれば悲しみのあまり天も老いるだろうという、情の重さを言う名句です。幽恨は胸の奥に秘めた恨み、惆悵は悲しみに沈むことを言います。旧人は昔親しくした人、とくに別れた恋人のことです。夢のように消えた人は、目覚めればどこを探してもいません。失ったものを追い続ける苦しさと、それでも忘れられない思いの深さが、静かな秋の情景を通して伝わってきます。
この章句が説くこと
情秋無常追憶離別
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