酔古堂剣掃 / 集峭・興衰の究竟を覷破す
覷破興衰究竟,人我得失冰消;閱盡寂寞繁華,豪傑心腸灰冷。
新字:覷破興衰究竟,人我得失冰消;閲尽寂寞繁華,豪傑心腸灰冷。
書き下し
興衰の究竟を覷破すれば、人我の得失は冰のごとく消え;寂寞と繁華とを閱し盡くせば、豪傑の心腸も灰のごとく冷ゆ。
現代語訳
栄えることと衰えることの行き着く先を見破れば、他人と自分の損得へのこだわりは氷のように溶けて消えます。寂しさとにぎわいとをすべて経験し尽くせば、豪傑の激しい心も灰のように冷めていきます。
解説
世の盛衰や人生の浮き沈みを見尽くした者の、静かな境地を述べた対句です。覷破は見破ること、究竟は最後に行き着くところです。人我は他人と自分で、得失は損得のことです。興りも衰えも最後は同じところに行き着くと見抜けば、人と比べて得をした損をしたという思いは消えていきます。寂寞と繁華、つまり落ちぶれた寂しさも華やかな栄えも両方くぐり抜けてきた人は、功名を求める豪傑の熱い心も静まると言います。灰冷は冷え切った灰で、ここでは執着が燃え尽きたさまです。人と比べて焦る気持ちが湧いたとき、長い目で盛衰を眺める視点が心を落ち着けてくれます。
この章句が説くこと
盛衰得失達観処世無常
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集奇・冷眼に憑りて覷破す一段の世情は、全く冷眼に憑りて覷破し、幾番の幽趣は、半ば熱腸より換へ來たる。
-
『酔古堂剣掃』集醒・熱地に於いて冷を思ふ能く熱地に於いて冷を思へば、則ち一世淒涼を受けず。能く淡處に於いて濃を求むれば、則ち終身枯槁に落ちず。
-
『酔古堂剣掃』集靈・名利の場を參破す生死の關を打透すれば、生來たるも也た罷む、死來たるも也た罷む。名利の場を參破すれば、得るも也た好し、失ふも也た好し。
-
『酔古堂剣掃』集豪・熱地に於て冷を思ふ世に處するは當に熱地に於て冷を思ふべく、世を出づるは當に冷地に於て熱を求むべし。
-
『酔古堂剣掃』集峭・生死の關先づ破る窮通の境未だ遭はざるに、主持の局已に定まり;老病の勢未だ催さざるに、生死の關先づ破る。之を今の世に求むるに、誰か此れを語るに堪へん。
-
『酔古堂剣掃』集峭・困窮の背後には福跟隨す榮寵の旁邊には辱め等待す、必ずしも揚揚たらず;困窮の背後には福跟隨す、何ぞ戚戚たるを須ひん。