酔古堂剣掃 / 集醒・熱地に於いて冷を思ふ
能於熱地思冷,則一世不受淒涼;能於淡處求濃,則終身不落枯槁。
新字:能於熱地思冷,則一世不受淒涼;能於淡処求濃,則終身不落枯槁。
書き下し
能く熱地に於いて冷を思へば、則ち一世淒涼を受けず。能く淡處に於いて濃を求むれば、則ち終身枯槁に落ちず。
現代語訳
栄えている熱い場所にいながら冷めた境遇を思うことができれば、一生わびしい思いをすることはありません。淡泊な暮らしの中で濃やかな味わいを求めることができれば、一生干からびた暮らしに陥ることはありません。
解説
熱と冷、淡と濃という対を使って、心の釣り合いの取り方を説いた対句です。熱地は、権勢や繁栄のただ中にいる境遇です。そこで冷、つまり落ちぶれたときのことを思っておけば、いざ境遇が変わっても慌てず、淒涼、わびしさに打ちのめされることがありません。淡処は、質素でさっぱりした暮らしです。そこで濃、つまり心の濃やかな味わいを求めれば、清貧の暮らしが枯槁、干からびたつまらないものになることはありません。華やかなときには醒めた心を、質素なときには豊かな心を持つという、逆向きの工夫です。菜根譚にも、熱と冷を対にした句が多く見えます。今の自分がどちらの境遇にいるかによって、心がけるべきことが変わってくるのです。
この章句が説くこと
盛衰澹泊処世修身閑適
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