酔古堂剣掃 / 集情・漁舟は晚に唱ふ
漁舟唱晚,響窮彭蠡之濱;雁陣驚寒,聲斷衡陽之浦。
新字:漁舟唱晩,響窮彭蠡之浜;雁陣驚寒,声断衡陽之浦。
書き下し
漁舟は晚に唱ひ、響きは彭蠡の濱に窮まり;雁陣は寒に驚き、聲は衡陽の浦に斷ゆ。
現代語訳
漁船は夕暮れに舟歌をうたい、その響きは彭蠡湖(今の鄱陽湖)の岸辺の果てまで届きます。雁の列は寒さに驚いて鳴き、その声は衡陽の水辺で途切れます。
解説
唐の王勃が若くして書いた名文『滕王閣序』の一節です。滕王閣は江西の南昌にあった高楼で、そこから見渡す秋の夕景を描いています。彭蠡は今の鄱陽湖、衡陽は湖南の地で、雁は衡陽の回雁峰まで来て引き返すと言い伝えられていました。漁舟の歌が湖の果てまで響き、南へ渡る雁の声が遠く衡陽で絶えるという、音で空間の広がりを描く手法が見事です。「落霞と孤鶩と斉しく飛び」の名句の直後に置かれた対句としても知られます。遠くまで届く声、遠くで途切れる声に耳を澄ますと、景色の大きさが胸に迫ってきます。旅先で耳を澄ます楽しみを教えてくれる句です。
この章句が説くこと
滕王閣秋景自然風雅旅情
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