酔古堂剣掃 / 集情・尚子の清曠を慕ふ
聽風聲以興思,聞鶴唳以動懷,企莊生之逍遙,慕尚子之清曠。
新字:聴風声以興思,聞鶴唳以動懐,企荘生之逍遥,慕尚子之清曠。
書き下し
風聲を聽きて以て思ひを興し、鶴唳を聞きて以て懷ひを動かし、莊生の逍遙を企ち、尚子の清曠を慕ふ。
現代語訳
風の音を聴いては思いを起こし、鶴の鳴き声を聞いては胸を動かし、荘子ののびやかな遊びにあこがれ、尚子(後漢の尚長)の清らかで広々とした生き方を慕います。
解説
自然の音に心を動かされ、世俗を離れた生き方にあこがれる思いを述べた四句です。風の音や鶴の声は、隠者の暮らしを象徴する音でした。莊生の逍遙は、『荘子』の冒頭の「逍遥遊」に説かれる、何ものにもとらわれない自由な遊びです。尚子は後漢の尚長のことで、子どもたちの結婚をすべて済ませると家のことを断ち、友と五岳の名山を巡って行方を知らせなかったと伝えられます。清曠は心が清らかで広々としていることです。務めを果たし終えた後に自由な旅に出た尚長の生き方は、今の私たちにも一つの憧れの形を示してくれます。心の中に逍遥の余地を残しておきたいものです。
この章句が説くこと
隠逸逍遥自然閑適清曠
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