酔古堂剣掃 / 集情・鴨は香を憐れむが爲に死す
鴨為憐香死,鴛因泥睡癡。
新字:鴨為憐香死,鴛因泥睡痴。
書き下し
鴨は香を憐れむが爲に死し、鴛は泥に睡るに因りて癡なり。
現代語訳
鴨の形の香炉は香をいとおしむあまり火が尽きて冷たくなり、おしどりはぬかるみに寄り添って眠りこけ、うっとりと我を忘れています。
解説
閨の香炉と水辺のおしどりを対にして、恋に溺れるさまを詠んだ五言の対句です。鴨は、ここでは鴨の形をした香炉と読むのが自然で、香が燃え尽きて火が消えることを「死す」と言ったとみられます。鴛は仲睦まじい夫婦の象徴であるおしどりで、杜甫の詩に「沙暖かにして鴛鴦睡る」とあるように、暖かな水辺で寄り添って眠る姿が詠まれてきました。癡は夢中になって我を忘れることです。いとおしむあまりに尽き果て、寄り添うあまりに我を忘れる、その甘美さと危うさが同居しています。何かに夢中になることの喜びと、その先にある消耗の両方を思わせる句です。
この章句が説くこと
恋情香炉鴛鴦耽溺詩情
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