酔古堂剣掃 / 集情・沈檀の合子に雙結を留む
蘋風未冷催鴛別,沈檀合子留雙結;千縷愁絲只數圍,一片香痕纔半節。
新字:蘋風未冷催鴛別,沈檀合子留双結;千縷愁糸只数囲,一片香痕纔半節。
書き下し
蘋風未だ冷やかならざるに鴛の別れを催し、沈檀の合子に雙結を留む;千縷の愁絲は只だ數圍、一片の香痕は纔かに半節。
現代語訳
浮草を渡る風がまだ冷たくもならないうちに、おしどりのような二人の別れがせかされ、沈香と白檀の小箱には二人で結んだ結び目を残しました。千筋の愁いの糸もただ数回り巻くばかり、一片の香の跡はわずか半節ほど残るだけです。
解説
恋人との別れと、残された形見を詠んだ七言の四句です。蘋風は浮草の上を渡る風で、秋の初めを感じさせます。鴛はおしどりで、仲睦まじい夫婦のたとえです。沈檀の合子は香木で作った蓋付きの小箱、雙結は二つの輪を結んだ結び目で、心を結び合わせるしるしです。後半の愁いの糸と香の跡は、別れの後に残った思いと移り香のはかなさを、量の小ささで言い表しています。大げさに嘆かず、小さな物に思いを託すところに情の深さがあります。大切な人との思い出の品を、あなたも一つは持っているのではないでしょうか。
この章句が説くこと
恋情別離形見愁い詩情
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