酔古堂剣掃 / 集情・暗に囑して話すを休めしむ
金錢賜侍兒,暗囑教休話。
新字:金銭賜侍児,暗囑教休話。
書き下し
金錢を侍兒に賜ひ、暗に囑して話すを休めしむ。
現代語訳
お金を侍女に与えて、こっそり言い含め、誰にも話さないようにさせます。
解説
人に知られたくない逢瀬を、口止めという小さな場面で描いた句です。侍兒は身の回りの世話をする侍女、暗囑はひそかに言い含めることです。お金を握らせて「誰にも言わないで」と頼むしぐさだけで、秘めた恋の緊張や、見つかることを恐れる心が伝わってきます。唐や宋の詞には、このように一場面を切り取って恋の事情を想像させる作が多くあります。直接に心情を語らないぶん、読む者の想像がふくらみます。一方で、口止めが必要な事柄は、いずれ人の心に重くのしかかるものでもあります。隠し事と誠実さの折り合いを考えさせる一句です。
この章句が説くこと
恋情秘密侍女口止め誠実
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・人を戒むると己を戒むると孰れか難き余少き時曾て當に密なるべきの語を泄らす。先君之を責む。對へて曰く、「已に聞く者を戒めて泄らす勿からしめたり」と。先君曰く、「子は子の口を必する能はずして、能く人の口を必するか。且つ人を戒むると己を戒むると孰れか難き。小子之を慎め」と。
-
『呻吟語』内篇・修身・枕席の言は四海に通ず枕席の言、房闥の行は、四海に通ず。牆卑く室淺き者は論ずる無く、即ち宮禁の深嚴なるも、言ひて知られず、動きて聞かれざる者有る無し。士君子名節を愛せずんば則ち已む。如し一毫も自ら好むの心有らば、幽獨盲動慎まざる可けんや。
-
孫子・始計篇此れ兵家の勝なり。先づ伝うべからざるなり。
-
『甲陽軍鑑』品第四十二しる如件雑人のいふ、よき事を吉凶に任せつくる也、信玄公のあひこと、関東越後·美濃·三河もろ〳〵の敵地にて後は存したるにより御他界の一両年前よりは敵かふくべなどこ作りて申候は、能信玄公御ほこさきつよくして、
-
『呻吟語』内篇・談道・才かに天機を露はせば便ち玄ならず總て泉壤に埋むるも終に須らく白かるべし、才かに天機を露はせば便ち玄ならず。
-
『忍経』謝罪敦睦・若し他に答へなば却つて他と一等『師友雜記』に云ふ「或ひと滎陽公に問ふ、小言の罟罵する所と為らば、當に何を以て之に處すべき、と。公曰く『上なる者は、人と己と本一なるを知る。何者をか罟と為し、何者をか辱と為さん。自然に憤怒の心無し。下なる者は、且く自ら思ひて曰へ『我は是れ何等の人ぞ、彼は何等の人たるか。若し是れ他に答へなば、卻つて他と一等なり』と。此を以て自ら比ぶれば、憤心自ら消ゆるなり』」と。 唐充之云ふ「前輩說く、後生の垢を忍ぶ能はざるは、人と為るに足らず。人の密論を聞きて容受する能はずして、輕しく之を泄らすは、以て人と為るに足らず」と。