酔古堂剣掃 / 集情・人惜しむに堪へ情更に惜しむに堪ふ
銀燭輕彈,紅粧咲倚,人堪惜,情更堪惜;困雨花心,垂陰柳耳,客堪憐,春亦堪憐。
新字:銀燭軽弾,紅粧咲倚,人堪惜,情更堪惜;困雨花心,垂陰柳耳,客堪憐,春亦堪憐。
書き下し
銀燭輕く彈き、紅粧咲ひて倚る、人惜しむに堪へ、情更に惜しむに堪ふ。雨に困しむ花心、陰を垂るる柳耳、客憐れむに堪へ、春も亦た憐れむに堪ふ。
現代語訳
銀の燭台の灯芯を軽くはじき、紅をさした人が笑みを浮かべて寄り添います。その人がいとおしく、その情はなおいとおしいものです。雨に打たれて弱った花の芯、影を垂らす柳の芽。旅人も哀れですが、過ぎゆく春もまた哀れです。
解説
いとおしさと哀れさを、夜の室内と春の雨の景で並べた一則です。銀燭輕く彈くは、明るくするために燭の芯を指ではじくしぐさです。紅粧は化粧した女性、咲は笑の古い字です。後半の柳耳は柳の若芽とみられます。前半では人と情を、後半では旅人と春を、それぞれ惜しむ、憐れむと重ねて言うことで、思いがだんだんと深まっていく調子が生まれています。目の前の人だけでなく、その人との間に通う情そのものを惜しむという感覚は、人間関係の本質を突いています。相手を大切にするとは、共に過ごす時間の温かさをも大切にすることなのでしょう。
この章句が説くこと
情春無常愛惜風雅
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