酔古堂剣掃 / 集情・醒めて後夢還れども心還らず
枕邊夢去心亦去,醒後夢還心不還。
新字:枕辺夢去心亦去,醒後夢還心不還。
書き下し
枕邊夢去れば心も亦た去り、醒めて後夢還れども心還らず。
現代語訳
枕元で夢が去っていくと、心も一緒に去っていきます。目覚めたあと夢は戻ってきても、心は戻ってきません。
解説
夢と心の行き来を、わずか十四字で描いた対句です。眠りに落ちて夢の中で恋しい人のもとへ向かうとき、心も夢と一緒に相手のもとへ飛んでいきます。目覚めると夢はこちらの世界に戻ってくるのに、心は相手のもとに置いてきたまま戻らないというのです。去と還、夢と心という語を入れ替えながら繰り返す言葉の遊びが、未練の深さを軽やかに表しています。昔の中国では、夢の中で魂が体を離れて思う人のもとへ行くと考えられていました。朝起きても何となく気持ちがここにないという経験は、誰にでもあるでしょう。心がどこにあるかを知ることは、自分が本当に大切にしているものを知ることでもあります。
この章句が説くこと
情夢恋慕未練心
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・修身・心に城池有り、口に門戶有り心は城池有るを要し、口は門戶有るを要す。城池有れば則ち出でず、門戶有れば則ち縱にせず。
-
『呻吟語』外篇・天地・心は就ち是れ天なり心は就ち是れ天なり。心を欺くは便ち是れ天を欺くなり。心に事ふるは便ち是れ天に事ふるなり。更に須らく蒼蒼の上面に向かひて討むべからず。
-
『呻吟語』内篇・修身・心を大にし虛にし平にし潛め定む其の心を大にして天下の物を容れ、其の心を虛にして天下の善を受け、其の心を平にして天下の事を論じ、其の心を潛めて天下の理を觀、其の心を定めて天下の變に應ず。
-
『正法眼蔵随聞記』巻一示して云く、人は思ひ切て命をも棄て、身肉手足をも截ことは中々せくるゝなり、然あれば世間の事を思ふに、名利執心の為にも多くかくの如く思ひ切るなり、只依り来る時に、事に触れ物に随て、心品を調ふること難きなり、学者身命を捨ると思ふて、且くおしゝづめて、云ふべきことをも、修すべきことをも、道理に順ずるか順せざるかと案じて、道理に順せば云ひ、若くは行じもすべきなり、
-
『呻吟語』内篇・存心・心は天平のごとくならんことを要す心は天平のごとくならんことを要す。物を稱る時、物は忙しくして衡は忙しからず。物去る時、即ち懸空して此に在り。只だ恁く靜虛中正なれば、何等ぞ自在ならん。
-
『呻吟語』外篇・人情・心は二三を怕れ、情は一を怕る心は二三を怕れ、情は一を怕る。