酔古堂剣掃 / 集情・山河綿邈として粉黛新しきが若し
山河綿邈,粉黛若新。椒華承彩,竟虛待月之簾;夸骨埋香,誰作雙鸞之霧。
新字:山河綿邈,粉黛若新。椒華承彩,竟虚待月之簾;夸骨埋香,誰作双鸞之霧。
書き下し
山河は綿邈として、粉黛は新しきが若し。椒華は彩を承くるも、竟に月を待つの簾を虛しうし、夸骨は香を埋む、誰か雙鸞の霧を作さん。
現代語訳
山や河ははるかに遠く続き、化粧をしたその人の面影は今も新しいかのようです。後宮の椒房は美しく彩られていても、ついに月の出を待つ簾は空しく垂れたままで、香り高い美しい人の骨は土に埋もれてしまいました。誰がもう一度、つがいの鸞が舞う霧を立ちのぼらせてくれるでしょうか。
解説
亡くなった美しい人を悼む一則です。綿邈ははるかに続くさま、粉黛はおしろいと眉墨で、化粧をした女性の面影を指します。椒華は、壁に山椒を塗り込めた皇后の部屋、椒房を思わせます。月を待つ簾が空しいとは、夜ごと待つ人がもういないことです。夸骨は解しにくい語ですが、美しい人の遺骨の意にとりました。雙鸞は対の鸞で、仲むつまじい二人の象徴です。時がたち山河が隔てても面影だけは色あせないという感覚は、誰かを亡くした人なら分かるものでしょう。思い出が鮮やかなのは、それだけ深く心を通わせた証です。
この章句が説くこと
情追悼別離美人無常
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