酔古堂剣掃 / 集情・花枝も伊に似難し
深花枝,淺花枝,深淺花枝相間時,花枝難似伊;巫山高,巫山低,莫雨瀟瀟郎不歸,空房獨守時。
新字:深花枝,浅花枝,深浅花枝相間時,花枝難似伊;巫山高,巫山低,莫雨瀟瀟郎不帰,空房独守時。
書き下し
深き花枝、淺き花枝、深淺の花枝相間はる時、花枝も伊に似難し。巫山高く、巫山低し、莫雨瀟瀟として郎歸らず、空房獨り守る時。
現代語訳
濃い色の花の枝、淡い色の花の枝。濃淡の花の枝が入りまじって咲くときでも、その花の枝さえあの人の美しさには及びません。巫山は高く、巫山は低く、夕暮れの雨がしとしとと降っても、あの人は帰ってこず、がらんとした部屋を一人で守っています。
解説
長相思という詞の調べによる、恋の歌の一篇です。前半は、色とりどりの花も恋しい人の美しさには及ばないとたたえ、後半は、帰らぬ人を待つ寂しさを歌います。伊はあの人、巫山は楚王が夢で神女と契ったという山で、恋の象徴です。莫雨は暮雨の意味で、巫山の神女が朝には雲、夕べには雨となると言った話を踏まえています。瀟瀟は雨がもの寂しく降るさまです。深淺、高低と、同じ語を重ねて繰り返す民謡風の調べが、単純なだけに胸に響きます。思いは飾った言葉より、素朴な繰り返しの中にこそまっすぐ表れるものかもしれません。
この章句が説くこと
情恋愛詞待つ花
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