酔古堂剣掃 / 集情・雨雲襄王の夢に入らず
花柳深藏淑女㞐,何殊弱水三千;雨雲不入襄王夢,空憶巫山十二。
新字:花柳深蔵淑女㞐,何殊弱水三千;雨雲不入襄王夢,空憶巫山十二。
書き下し
花柳深く藏す淑女の㞐、何ぞ弱水三千に殊ならん。 雨雲襄王の夢に入らず、空しく巫山十二を憶ふ。
現代語訳
花や柳の奥深くに隠れた淑女の住まいは、三千里の弱水(仙境を隔てる川)とどう違いましょう。雨や雲となる神女は襄王の夢に入ってこず、むなしく巫山の十二の峰を思うばかりです。
解説
近くにいながら会えない人への思いを、仙境と神女の伝説に託した一則です。弱水は仙人の住む地を取り巻くとされた川で、羽毛さえ浮かばないため人は渡れないと言われました。三千は遠さを誇張した数です。後半は、戦国時代の宋玉の賦に描かれた、楚王の夢に巫山の神女が現れ、朝は雲、夕べは雨となると告げて去った話によります。襄王は、その話が語られた相手の楚の王です。巫山には十二の峰があるとされました。花柳の奥に住む女性は、手の届く所にいるのに、仙境のように遠く、夢にさえ現れてくれません。距離よりも心の隔たりのほうが遠いことを感じさせる句です。
この章句が説くこと
情恋慕神女隔たり夢
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