酔古堂剣掃 / 集情・山水花月直だ美人に借りて韻を生ず
山水花月之際,看美人更覺多韻。非美人借韻於山水花月也,山水花月直借美人生韻耳。
新字:山水花月之際,看美人更覚多韻。非美人借韻於山水花月也,山水花月直借美人生韻耳。
書き下し
山水花月の際に、美人を看れば更に韻多きを覺ゆ。美人の韻を山水花月に借るに非ざるなり、山水花月の直だ美人に借りて韻を生ずるのみ。
現代語訳
山や水、花や月のある景色の中で美しい人を見ると、いっそう趣が深く感じられます。それは美しい人が山水花月から趣を借りているのではありません。山水花月のほうが、美しい人から趣を借りて生み出しているにすぎないのです。
解説
美しい人と風景の関係を、ひっくり返して見せた機知のある一則です。韻は趣、風情のことです。ふつうは、美しい景色の中にいるから人も美しく見えると考えますが、この句は逆に、人がいるからこそ景色が生きると言います。景色は、そこに心を寄せる人がいて初めて意味を持つという見方でもあります。どれほど美しい山や花も、見る人、そこにたたずむ人がいなければ、ただの物にすぎません。旅の思い出も、景色そのものより、誰とそこにいたかで輝きが変わるものです。場所の力を借りるより、人の力で場所を輝かせる人でありたいものです。
この章句が説くこと
美人風雅自然情逆説
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