酔古堂剣掃 / 集情・世に花月美人無くんば
世無花月美人,不願生此世界。
書き下し
世に花月美人無くんば、此の世界に生まるるを願はず。
現代語訳
もしこの世に花と月と美人がなかったら、私はこの世界に生まれたいとは思いません。
解説
美しいものへの愛を、極端な言い方で宣言した一則です。花と月は自然の美、美人は人の美の代表で、これらがなければこの世に生まれてくる甲斐がないとまで言い切っています。清の張潮の『幽夢影』にも花と月と美人を並べて愛でる言葉が多く見られ、美しいものを人生の意味の中心に置く明末清初の文人の感性がよく表れています。大げさに聞こえますが、裏返せば、美しいものに心を動かされることこそが生きる喜びだという主張です。忙しい毎日の中でも、花の色や月の光に足を止める余裕を持つことが、生きている実感を取り戻す手がかりになります。
この章句が説くこと
風雅美自然情花月
関連する章句
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『幽夢影』巻上・翰墨棋酒無くんば昔人云ふ、若し花・月・美人無くんば、此の世界に生ずるを願はずと。予一語を益して云ふ、若し翰・墨・棋・酒無くんば、必ずしも定めて人身と作らずと。
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『酔古堂剣掃』集情・山水花月直だ美人に借りて韻を生ず山水花月の際に、美人を看れば更に韻多きを覺ゆ。美人の韻を山水花月に借るに非ざるなり、山水花月の直だ美人に借りて韻を生ずるのみ。
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『幽夢影』巻下・花は其の落つるを見るべからず花は其の落つるを見るべからず、月は其の沉むを見るべからず、美人は其の夭するを見るべからず。
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『酔古堂剣掃』集素・燈下に花を玩び簾內に月を看る燈下に花を玩び、簾內に月を看、雨後に景を觀、醉裏に詩を題し、夢中に書聲を聞く、皆別趣有り。
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『酔古堂剣掃』集奇・美人は簾影を看る花は水影を看、竹は月影を看、美人は簾影を看る。
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『酔古堂剣掃』集韻・一生を枉卻す世路中の人、或いは功名を圖り、或いは生產を治む、盡く自ら正經なり。爭奈せん大地の間の好風月、好山水、好書籍に、了に相涉らざるを、豈に一生を枉卻するに非ずや。