酔古堂剣掃 / 集情・山下の蘼蕪
亭前楊柳,送盡到處游人;山下蘼蕪,知是何時歸路。
新字:亭前楊柳,送尽到処游人;山下蘼蕪,知是何時帰路。
書き下し
亭前の楊柳、到る處の游人を送り盡し、山下の蘼蕪、知んぬ是れ何れの時の歸路ぞ。
現代語訳
宿場の前の柳は、あちこちから来た旅人をみな見送ってきました。山のふもとの蘼蕪(香草)の道は、いったいいつになったら帰り道になるのでしょうか。
解説
別れと帰らぬ人を待つ思いを詠んだ対句です。亭は旅人を見送る宿場のあずまやで、中国では別れに柳の枝を折って贈る習わしがありました。その柳は数えきれない別れを見てきたというのです。蘼蕪は香草の名で、古詩に、山に上って蘼蕪を摘み、山を下りてかつての夫に出会うという、離縁された女性の歌があり、それを踏まえていると考えられます。送る側の悲しみと、帰りを待つ側の不安が一つの句に収められています。出会いと別れを繰り返すのは人の常ですが、送り出した人がいつか帰ってくる道を、心の中に残しておきたいものです。
この章句が説くこと
別離情旅待つ柳
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