酔古堂剣掃 / 集情・君王の數餅の金を賸取す
教移蘭燼頻羞影,自拭香湯更怕深,初似染花難抑按,終憂沃雪不勝任,豈知侍女簾幃外,賸取君王數餅金。
新字:教移蘭燼頻羞影,自拭香湯更怕深,初似染花難抑按,終憂沃雪不勝任,豈知侍女簾幃外,賸取君王数餅金。
書き下し
蘭燼を移さしめて頻りに影を羞ぢ、自ら香湯を拭ひて更に深きを怕る、初めは花を染むるに似て抑按し難く、終には雪に沃ぐを憂へて任に勝へず、豈に知らんや侍女は簾幃の外に、君王の數餅の金を賸取せんとは。
現代語訳
灯火を別の場所へ移させては、しきりに自分の影を恥じらい、みずから香り湯をぬぐっては、さらに深みに身を沈めるのをためらいます。はじめは花を染めるように肌が色づいて抑えがたく、しまいには雪に湯を注ぐように溶けてしまいそうで身がもちません。ところが、簾の外では侍女が、君王から何枚もの金の褒美をせしめていたとは、思いもよらないことでした。
解説
湯浴みをする女性の恥じらいを描いた艶やかな詩です。蘭燼は香りのよい灯火の燃えさし、香湯は香を入れた湯です。結びの二句は、漢の成帝が寵愛する趙合徳の湯浴みをひそかにのぞこうとして、侍女たちに金を与えて口止めしたという、飛燕外伝に見える話を踏まえています。本人は人目を気にして恥じらっているのに、実は外では見られる手はずが整っていたという皮肉な結末です。艶っぽい題材ですが、読みどころは、当人の必死さと外の現実とのずれを描く機知にあります。自分だけが知らないところで事が運んでいる、という状況は今の職場でも起こりうるものです。
この章句が説くこと
情故事宮廷機知文学
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