酔古堂剣掃 / 集醒・操存嚴ならざれば
隄防不築,尚難支移壑之虞;操存不嚴,豈能塞橫流之性。
新字:堤防不築,尚難支移壑之虞;操存不厳,豈能塞横流之性。
書き下し
隄防築かざれば、尚ほ移壑の虞を支へ難し。 操存嚴ならざれば、豈に能く橫流の性を塞がんや。
現代語訳
堤防を築いておかなければ、谷をも押し流すような洪水の心配を支えきれません。心を保つ修養が厳しくなければ、どうして勝手に溢れ出す性情を塞ぎとめられるでしょうか。
解説
治水の比喩で心の修養を説く一則です。前半の堤防と洪水が、後半の操存と横流する性情にそのまま対応しています。操存は『孟子』の「操れば則ち存し、舍つれば則ち亡ぶ」に由来する語で、心をしっかり握って失わないことを言います。移壑は、谷の形まで変えてしまうほどの大水のことです。欲望や怒りは水と同じで、ふだんは静かでも、ひとたび溢れれば手がつけられません。だからこそ、水が来る前に堤を築くように、平時から心の守りを固めておく必要があります。忙しさや疲れで自分を律する習慣がゆるんだときこそ、思い出したい句です。
この章句が説くこと
修身操存節制克己心
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