酔古堂剣掃 / 集醒・名を立つるの心太だ急なり
士大夫損德處,多由立名心太急。夫人身在局外,未可輕議局內事。
新字:士大夫損徳処,多由立名心太急。夫人身在局外,未可軽議局内事。
書き下し
士大夫の德を損なふ處は、多く名を立つるの心太だ急なるに由る。夫れ人身局外に在りては、未だ輕々しく局內の事を議すべからず。
現代語訳
士大夫が徳を損なうのは、多くは名を上げようとする気持ちがあまりにせっかちであることによります。そもそも人は、身がその局面の外にあるときには、軽々しく局面の内側の事柄をあれこれ論じてはなりません。
解説
名声を急ぐ心と、当事者でない者の軽々しい論評を戒めた一則です。士大夫は学問を修めて官に仕える知識人層のことです。彼らが徳を損なうのは、早く名を立てたいという焦りから、目立つ言動や過激な主張に走るからだと言います。そうした焦りは、しばしば局外、つまり自分が当事者でない問題に口を出し、局内の事情も知らずに批判する形で現れます。局は碁盤から来た言葉で、物事の場面や情勢のことです。外から見ると簡単に見えることも、内側には多くの事情があるものです。評判を得たいあまりに、よく知らない事柄を論評していないか、とくに発信の機会が多い今の時代には、心に留めておきたい言葉です。
この章句が説くこと
名利慎言修身焦り判断
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