酔古堂剣掃 / 集醒・氣收まれば自ら怒り平らかなり
氣收自覺怒平,神斂自覺言簡,容人自覺味和,守靜自覺天寧。
新字:気収自覚怒平,神斂自覚言簡,容人自覚味和,守静自覚天寧。
書き下し
氣收まれば自ら怒りの平らかなるを覺え、神斂まれば自ら言の簡なるを覺え、人を容るれば自ら味の和するを覺え、靜を守れば自ら天の寧きを覺ゆ。
現代語訳
気持ちが収まれば、自然と怒りが静まるのを感じます。精神が引き締まれば、自然と言葉が簡潔になるのを感じます。人を受け入れれば、自然と味わいが和らぐのを感じます。静けさを守れば、自然と天の安らぎを感じます。
解説
心の内を整えると、それが自然に外の変化となって現れることを、四つの句で示した一則です。気を収めることで怒りが平らになり、神、つまり精神を斂める、引き締めることで言葉が簡潔になります。人を容れることで人間関係の味わいが和らぎ、静を守ることで天の寧さ、天性の安らぎが感じられます。いずれも自ら覚ゆ、つまり無理に努力しなくても自然とそうなることを感じる、という形になっています。怒りを抑えようとしたり、言葉を減らそうとしたりしても、なかなかうまくいきません。まず呼吸を整え、心を静めることから始めれば、その結果として外のふるまいも変わっていくのでしょう。
この章句が説くこと
修身心境寛容静寂節制
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集素・大賓と雖も牲を宰らず親にも飯を抬げず、大賓と雖も牲を宰らず。 直だに奢侈を戒めて久しかるべきのみに匪ず、亦た將に煩勞を免れて以て身を安んぜんとす。
-
『酔古堂剣掃』集綺・花は半開を看る木香盛んに開けば、杯を把りて獨り其の下に坐し、遙かに青奴をして笛を吹かしめ、止だ一小奚を留めて酒に侍せしむ。才かに少しく斟酌すれば便ち退きて、迎春の架の後に立つ。 花は半開を看、酒は微醉に飲む。
-
『幽夢影』巻下・酒は好むべくも座を罵るべからず酒は好むべくも座を罵るべからず、色は好むべくも生を傷るべからず、財は好むべくも心を昧ますべからず、氣は好むべくも理を越ゆべからず。
-
『酔古堂剣掃』集醒・舞衣は暗に動くの兵戈明らかに紅樓の塚無きの邱壟為るを識るも、迷ひ來りては認めて捨生の岩と作す。直ちに舞衣の暗に動くの兵戈為るを知らば、快く去りて暫く試劍石に同じうせよ。
-
『酔古堂剣掃』集素・但だ半酣を取りて風月と侶と為す酒を飲むには真に認むべからず、真に認むれば則ち大いに醉ひ、大いに醉へば則ち神魂昏亂す。 書に在りては沉湎と為し、詩に在りては童羖と為し、禮に在りては豢豕と為し、史に在りては狂藥と為す。 何ぞ如かん、但だ半酣を取りて、風月と侶と為すに。
-
『酔古堂剣掃』集豪・金を見て人を見ず金を市に攫む者は、金を見て人を見ず。身を剖きて珠を藏する者は、珠を愛して自ら愛するを忘る。夫の性命を決して以て富貴を饕り、嗜欲を縱にして以て生を損ふ者と何ぞ異ならん。