酔古堂剣掃 / 集醒・名茶美酒は自ら真味有り
名茶美酒,自有真味。好事者投香物佐之,反以為佳,此與高人韻士悞墮塵網中何異。
新字:名茶美酒,自有真味。好事者投香物佐之,反以為佳,此与高人韻士悞堕塵網中何異。
書き下し
名茶美酒は、自ら真味有り。好事の者香物を投じて之を佐け、反つて以て佳と為す。此れ高人韻士の悞りて塵網の中に墮つると何ぞ異ならん。
現代語訳
名高い茶やうまい酒には、それ自体に本当の味わいがあります。物好きな人は香りのするものを加えて引き立てようとし、かえってそれを良いと思っています。これは高潔で風雅な人が、うっかり俗世の網の中に落ちてしまうのと何が違うでしょうか。
解説
良いものに余計な飾りを加えることの愚を、茶と酒のたとえで説いた一則です。名茶美酒にはそれ自身の真味があるのに、好事家は香料や香りの強いものを加えて、それを工夫だと思い込んでいます。それは、本来清らかな高人韻士が、世俗の網に絡め取られて本来の姿を失うのと同じだというのです。塵網は俗世のしがらみを網にたとえた言葉で、陶淵明の詩にも見えます。人も物も、本来の良さを生かすことが大切で、飾りを加えすぎるとかえって台無しになります。企画や文章でも、盛り込みすぎて本質がぼやけることがよくあります。素材の持ち味を信じて、引き算で仕上げる感覚を大切にしたいものです。
この章句が説くこと
風雅自然素朴真味品格
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集倩・美女は鉛華を尚ばず美女は鉛華を尚ばず、疏雲の淡月に映ずるに似たり。 禪師は空寂に落ちず、碧沼の青蓮を吐くが若し。
-
『呻吟語』内篇・養生・太樸は天地の命脈太樸は、天地の命脈なり。太樸散じて天地の壽妖卜す可し。故に萬物蕃れば、則ち造化の元精耗散す。木の實多き者は根傷み、草の莖出づる者は根虛し、費用廣き者は家貧しく、言行多き者は神竭く。皆な妖道なり。老子の受用の處は、盡く此の中に看破す。
-
『酔古堂剣掃』集醒・童子は智少なくして愈〻完し童子は智少なし、愈〻少なくして愈〻完し。成人は智多し、愈〻多くして愈〻散ず。
-
『酔古堂剣掃』集綺・野花目に艷なり野花目に艷なり、必ずしも牡丹ならず。 村酒人を醉はしむ、何ぞ綠蟻を須ゐん。
-
『呻吟語』内篇・應務・無用の樸は君子貴ばず無用の樸は、君子貴ばず。機械變詐を事とせずと雖も、德慧術知に至りては、亦た無かる可からず。
-
論語・先進篇子曰く、先進の礼楽に於けるは、野人なり。後進の礼楽に於けるは、君子なり。如し之を用いば、則ち吾は先進に従わん。