酔古堂剣掃 / 凡例・意趣の相合ふ者を以て類を分つ
一、愽採《史記》《漢書》《世說》䓁書目所經見者,靡不揀入別調者,便不濫摘。 一、從來選清言者,俱間襍不倫,今以意趣相合者擬議分類,類各有引,引各導窾,細繹自明。 一、群書所取,雖有部分,然或興到筆隨、大同小異者,不妨互收。 一、集有批點,出韻人口,入韻人目,如磁遇鐵,自然相投,不必點綴為工。茲雖無批點,而已入韻目。 一、予居恆手錄成帙,復與石臣輩客窻時篝火校讐。有刪改,主以獨見,參之眾裁。 一、名公姓氏,非敢妄書。但係同志,即書字號。正望奇文共欣賞,疑義相與晰。 一、是編縱未令長安紙貴,倘蒙玄鑒,嗣有續刻。 一、板取梨木,精擇佳紙。更覔刻手名家,筆筆真楷,雅緻一叚,苦心珍賞家原之。
新字:一、愽採《史記》《漢書》《世説》䓁書目所経見者,靡不揀入別調者,便不濫摘。 一、従来選清言者,倶間襍不倫,今以意趣相合者擬議分類,類各有引,引各導窾,細繹自明。 一、群書所取,雖有部分,然或興到筆随、大同小異者,不妨互収。 一、集有批点,出韻人口,入韻人目,如磁遇鉄,自然相投,不必点綴為工。茲雖無批点,而已入韻目。 一、予居恒手録成帙,復与石臣輩客窓時篝火校讐。有刪改,主以独見,参之衆裁。 一、名公姓氏,非敢妄書。但係同志,即書字号。正望奇文共欣賞,疑義相与晰。 一、是編縦未令長安紙貴,倘蒙玄鑒,嗣有続刻。 一、板取梨木,精択佳紙。更覔刻手名家,筆筆真楷,雅緻一叚,苦心珍賞家原之。
書き下し
一、愽く『史記』『漢書』『世說』䓁の書の、目の經見する所の者を採り、揀びて入れざるは靡し。別調なる者は、便ち濫りに摘まず。 一、從來清言を選ぶ者は、俱に間襍して倫ならず。今意趣の相合ふ者を以て擬議して類を分つ。類ごとに各〻引有り、引ごとに各〻窾を導く。細かに繹ぬれば自ら明らかなり。 一、群書の取る所、部分有りと雖も、然れども或いは興到り筆隨ひ、大同小異なる者は、互ひに收むるを妨げず。 一、集に批點有るは、韻人の口より出で、韻人の目に入る。磁の鐵に遇ふが如く、自然に相投ず。必ずしも點綴を工と為さず。茲に批點無しと雖も、而も已に韻目に入る。 一、予居恆に手づから錄して帙を成し、復た石臣の輩と客窻に時に篝火して校讐す。刪改有るは、獨見を主とし、之を眾裁に參ふ。 一、名公の姓氏は、敢へて妄りに書せず。但だ同志に係る者は、即ち字號を書す。正に奇文共に欣賞し、疑義相與に晰かにせんことを望む。 一、是の編、縱ひ長安の紙をして貴からしめずとも、倘し玄鑒を蒙らば、嗣いで續刻有らん。 一、板は梨木を取り、精しく佳紙を擇ぶ。更に刻手の名家を覔め、筆筆真楷なり。雅緻の一叚、苦心なり、珍賞家之を原せよ。
現代語訳
一、『史記』『漢書』『世説新語』などの書物から、目にしたものを広く採り、選んで入れなかったものはありません。ただ調子の違うものは、むやみに摘み取りませんでした。 一、これまで清言(清らかな格言)を選んだ人の本は、どれも雑多で筋が通っていませんでした。いまは趣の合うものどうしを考え合わせて部類に分けました。部類ごとに序を置き、序ごとに要所へ導いています。よく読み解けば自然にわかるはずです。 一、多くの書物から採ったものは部類に分けてありますが、興が乗って筆が進んだもの、大同小異のものは、互いに重ねて収めてもかまわないことにしました。 一、選集に批点(評の印)があるのは、風雅な人の口から出て風雅な人の目に入るもので、磁石が鉄に出会うように自然に通じ合うものです。飾り立てて巧みとする必要はありません。この本には批点はありませんが、すでに風雅な人の目にかなうものになっています。 一、私はふだんから手で書き写して帙(まとまった冊)にし、さらに石臣たちと旅の宿の窓辺で、ときに火をともして校訂しました。削ったり改めたりしたところは、私の考えを主にしつつ、皆の判断も参考にしました。 一、名高い人の姓名はみだりに書きませんでした。ただ志を同じくする仲間については字や号を書きました。まさに陶淵明の詩のように、すぐれた文章をともに味わい、疑わしいところをともに明らかにしたいと願っています。 一、この本がたとえ長安の紙の値を上げるほど売れなくても、もしご高覧をいただけるなら、続けて続編を刻むつもりです。 一、版木には梨の木を用い、紙もよく選びました。さらに名のある彫り師を探し、一筆一筆を正しい楷書で彫らせました。この上品な一段の苦心を、愛好家の方々は汲み取ってください。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『酔古堂剣掃』集倩・倩は多く得べからず倩は多く得べからず。 美人は其の韻有り、名花は其の致有り、青山綠水は其の豐標有り。 外は則ち山臞韻士、情景相會するの時に當たりて、偶ま一語を出だすも、亦た其の韻を盡くし、其の致を極め、其の豐標を領略せざるは莫し。 以て名花の笑ひを啓くべく、以て美人の歌を佐くべく、以て山水の清音を發すべし、而して又何ぞ多く得べけんや。 集倩第十二。
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『酔古堂剣掃』集奇・龍虎の吟を作す我が輩窗下に寂處し、一切の人世を視るに、俱に蠛蠓嬰媿の若く、目に寓するに堪へず。而るに一の奇文怪說有りて、目數行を下れば、便ち狂呼して絕を叫び、人をして喜ばしめ、人をして怒らしめ、更に人をして悲しましむ。低徊して數過すれば、床頭の短劍も亦た嗚嗚として龍虎の吟を作し、便ち人世一切の不平を覺えて、俱に煙水に付す。集奇第八。
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『酔古堂剣掃』集素・俗塵を撲ち去ること三寸余嘗て一室を淨め、一幾を置き、幾種の快意の書を陳べ、一本の舊法帖を放く。古鼎に香を焚き、素麈もて塵を揮ひ、意思小しく倦めば、暫く竹榻に休む。 餉時にして起き、則ち苦茗を啜り、手に信せて漢書幾行を寫し、意に隨ひて古畫數幅を觀る。 心目の間、灑灑として靈空なるを覺え、面上の俗塵、當に亦た撲ち去ること三寸なるべし。
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『酔古堂剣掃』集倩・書を觀るには欄に倚る書を觀るには、宜しく欄に倚りて笛を吹くべく、宜しく香を焚きて靜坐すべく、宜しく麈を揮ひて清談すべし。 江干は帆影に宜しく、山郁は煙嵐に宜しく、院落は楊柳に宜しく、寺觀は松篁に宜しく、溪邊は漁樵に宜しく、鷺鷥に宜しく、花前は娉婷に宜しく、鸚鵡に宜し。 翠霧霏微たるに宜しく、銀河清淺たるに宜しく、萬里雲無く、長空洗ふが如きに宜しく、千林雨過ぎて、叠嶂新たなるが如きに宜しく、高く江天に插むに宜しく、斜めに城郭に連なるに宜しく、窗を開きて海日を眺むるに宜しく、頂を露はして天風に臥すに宜しく、嘯くに宜しく、詠ずるに宜しく、終日棋を敲くに宜しく、酒に宜しく、詩に宜しく、清宵榻に對するに宜し。
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『酔古堂剣掃』集靈・古今の絕藝を收めて山窗に置く滄海の日、赤城の霞、蛾眉の雪、巫峽の雲、洞庭の月、瀟湘の雨、彭蠡の煙、廣凌の濤、廬山の瀑布、宇宙の奇觀を合はせて、吾が齋壁に繪く。少陵の詩、摩詰の畫、左傳の文、馬遷の史、薛濤の箋、右軍の帖、南華經、相如の賦、屈子の離騷、古今の絕藝を收めて、我が山窗に置く。
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『酔古堂剣掃』集韻・韻の一字は對癥の藥人斯の世に生まれて、天下の秘書靈笈を讀み盡す能はず。 目有りて昧く、口有りて啞し、耳有りて聾し、而して面上の三斗の俗塵、何れの時にか掃ひ去らん。 則ち韻の一字は、其れ世人對癥の藥か。 然りと雖も、今の世且つ香を焚き茗を啜り、清涼口に在りて、塵俗心に在り、儼然として自ら韻に附する有り、亦た何ぞ三家村の老嫗、口を動かして阿彌を念じ、便ち天に升り佛と成ると雲ふに異ならんや。 集韻第七。