素書 / 『素書』大成を支える土台
地薄者大物不產、水淺者大物不游、樹禿者大禽不棲、林疏者大獸不居。山峭者崩、澤滿者溢。棄玉取石者盲、羊質虎皮者飾。衣不舉領者倒、走不視地者顛。柱弱者屋壞、輔弱者國傾。
新字:地薄者大物不産、水浅者大物不游、樹禿者大禽不棲、林疏者大獣不居。山峭者崩、沢満者溢。棄玉取石者盲、羊質虎皮者飾。衣不舉領者倒、走不視地者顛。柱弱者屋壊、輔弱者国傾。
書き下し
地薄き者は大物産せず、水浅き者は大物游がず、樹禿なる者は大禽棲まず、林疏なる者は大獣居らず。山峭き者は崩れ、沢満つる者は溢る。玉を棄てて石を取る者は盲、羊質虎皮なる者は飾る。衣領を挙げざる者は倒れ、走りて地を視ざる者は顛く。柱弱き者は屋壊れ、輔弱き者は国傾く。
現代語訳
地が痩せていれば大きな産物は育たず、水が浅ければ大きな魚は泳がず、木が禿げていれば大きな鳥は棲まず、林がまばらなら大きな獣は住みません。山が険しすぎれば崩れ、沢が満ちすぎれば溢れます。玉を捨てて石を取る者は盲目であり、羊の質で虎の皮をかぶる者は見せかけです。衣の襟を持ち上げなければ着物は逆さまになり、走りながら足元を見ない者は転びます。柱が弱ければ家は壊れ、補佐が弱ければ国は傾きます。
解説
自然の比喩を連ねて、大きな成果には大きな土台が要ることを示します。痩せた土地に大きな作物は育たず、浅い水に大魚は泳がず、これは人材や組織の器の大きさにも当てはまります。「玉を棄てて石を取る」は、人材を見誤る愚かさ、「羊質虎皮」は実力が伴わない見かけだけの者を指します。襟を持たなければ着物が逆さまになる比喩は、要点をつかむ大切さと読めます。最後の「輔弱き者は国傾く」は、トップを支える補佐役の層の薄さが組織の弱点だということで、後継者や右腕の育成を考える手がかりになります。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
土台大物玉と石羊質虎皮襟補佐
関連する章句
-
素書・『素書』衰えは下から始まる足寒ければ心を傷め、人怨めば国を傷る。山将に崩れんとする者は下先ず隳れ、国将に衰えんとする者は人先ず弊る。根枯れて枝朽ち、人困しみて国残わる。覆車と轍を同じくする者は傾き、亡国と事を同じくする者は滅ぶ。已に生ずるを見ては将に生ぜんとするを慎み、其の跡を悪む者は須く之を避くべし。危うきを畏るる者は安く、亡ぶを畏るる者は存す。
-
素書・『素書』賢者が集まる国と去る国枉れる士に直き友無く、曲れる上に直き下無く、危うき国に賢人無く、乱れたる政に善人無し。人を愛すること深き者は賢を求むること急にして、賢を得るを楽しむ者は人を養うこと厚し。国将に覇たらんとする者は士皆帰し、邦将に亡びんとする者は賢先ず避く。
-
素書・『素書』人事と策の五つの落とし穴人の為に官を択ぶ者は乱れ、其の強き所を失う者は弱く、策を不仁に決する者は険く、陰計外に泄るる者は敗れ、厚く斂めて薄く施す者は凋む。
-
素書・『素書』賞罰と人の使い方戦士貧しく、游士富む者は衰え、貨賂公行する者は昧く、善を聞きて忽略し、過ちを記して忘れざる者は暴にして、任ずる所信ず可からず、信ずる所任ず可からざる者は濁り、人を牧するに徳を以てする者は集まり、人を縄すに刑を以てする者は散ず。
-
素書・『素書』福禍は積み重ねにある怨みは小過を舎かざるに在り、患いは預め謀を定めざるに在り。福は善を積むに在り、禍は悪を積むに在り、饑えは農を賤しむに在り、寒きは織を惰るに在り、安きは人を得るに在り、危うきは事を失うに在り。富は来たるを迎うるに在り、貧は時を棄つるに在り。上常に躁ぐこと無ければ、下疑心無し。上を軽んずれば罪を生じ、下を侮れば親しむ無し。近臣重んぜられざれば、遠臣之を軽んず。自ら疑う者は人を信ぜず、自ら信ずる者は人を疑わず。
-
文子・上德土の勢いは水に勝つも、一掬は江河を塞ぐ能わず。水の勢いは火に勝つも、一酌は一車の薪を救う能わず。冬に雷有り、夏に雹有るも、寒暑は其の節を変えず。霜雪麃麃たるも、日出づれば流る。傾けば覆り易く、倚れば翻り易く、幾なれば助け易く、湿なれば雨ふり易し。蘭芷は以て芳しく、霜を見るを得ず。蟾蜍の兵に塗るは、寿は五月の望に在り。精泄るる者は中て残われ易く、華咲く非時なる者は食う可からず。舌と歯と、孰れか先に弊るるか。縄と矢と、孰れか先に直きか。影をして曲がらしむる者は形なり、響きをして濁らしむる者は声なり。死と病を同じくする者は、良医たり難く、亡国と道を同じくする者は、忠謀を為す可からず。倡をして竽を吹かしめ、工をして竅を攝らしむれば、節に中ると雖も、以て決せしむ可きも、君形亡し。聾者は歌わず、以て自ら楽しむ無し、盲者は観ず、以て物に接する無し。林を歩む者は、直き道を得ず、険を行く者は、縄を履むを得ず。海内は其の出づる所なれば、故に能く大なり。日は並び出でず、狐は二雄ならず、神龍は匹せず、猛獣は群せず、鷙鳥は双ならず。蓋は橑に非ざれば日を蔽わず、輪は輻に非ざれば疾きを追わず、橑輪は未だ恃むに足らず。弧弓は射る能うも、弦に非ざれば発せず、矢を発するの射と為るは、十分の一なり。飢えたる馬廏に在りて、漠然として声無く、芻を其の旁に投ずれば、争心乃ち生ず。三寸の管に当無ければ、天下も満たす能わず、十石にして塞有らば、百斗にして足る。