孫子 / 火攻篇
時者,天之燥也。日者,月在箕、壁、翼、軫也。凡此四宿者,風起之日也。
書き下し
時とは天の燥けるなり。日とは月の箕・壁・翼・軫に在るなり。凡そ此の四宿は、風の起こるの日なり。
現代語訳
時とは、天候が乾いていることである。日とは、月が箕・壁・翼・軫の四つの星宿にかかる日である。これら四つの星宿の日は、風が起こる日である。
解説
火攻めを仕掛ける条件を、天候と暦で具体的に指定している。星宿による日取りは現代から見れば根拠に乏しいが、注目すべきは孫子が条件を「観測できるもの」に落とし込もうとした姿勢である。乾いているか、風が吹くか——当時知り得た手段で先を読もうとした。占いを排して人から情報を取れと説いた孫子が、気象については当時の天文知識に頼っている点も興味深い。仕掛けどきを勘に委ねず、外部条件として定義しようとする発想そのものが、いまも有効である。