孫子 / 九地篇
九地之變,屈伸之利,人情之理,不可不察也。
新字:九地之変,屈伸之利,人情之理,不可不察也。
書き下し
九地の変、屈伸の利、人情の理は、察せざるべからず。
現代語訳
九つの地形の変化、退くことと進むことの利害、そして人の心の道理は、よく見きわめねばならない。
解説
九地篇の中で将が把握すべきものを三つに要約した一句である。地形、進退、人情——外的条件、判断、そして人の心。この三つ目が並んでいることに注目したい。孫子は繰り返し人の心理を計算に入れており、それを地形と同じ「察するべき対象」として扱った。感情は制御するものでも無視するものでもなく、観察して前提に組み込むものだという姿勢である。人の気持ちを慮ることを情の問題として脇に置く経営者は多いが、孫子に言わせればそれは地形を見ずに行軍するのと同じである。
この章句が説くこと
九地屈伸人情観察前提
関連する章句
-
孫子・九地篇是の故に散地には則ち戦うこと無かれ、軽地には則ち止まること無かれ、争地には則ち攻むること無かれ、交地には則ち絶つこと無かれ、衢地には則ち交を合わせ、重地には則ち掠め、圮地には則ち行き、囲地には則ち謀り、死地には則ち戦う。
-
孫子・九地篇是の故に散地には吾将に其の志を一にせんとす。軽地には吾将に之を属せしめんとす。争地には吾将に其の後に趨らんとす。交地には吾将に其の守りを謹まんとす。衢地には吾将に其の結を固めんとす。重地には吾将に其の食を継がんとす。圮地には吾将に其の途を進まんとす。囲地には吾将に其の闕を塞がんとす。死地には吾将に之に示すに活きざるを以てせんとす。故に兵の情は、囲まるれば則ち禦ぎ、已むを得ざれば則ち闘い、過ぐれば則ち従う。
-
孫子・九地篇これを亡地に投じて然る後に存し、これを死地に陥れて然る後に生く。
-
孫子・九地篇孫子曰く、凡そ用兵の法は、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、圮地有り、囲地有り、死地有り。
-
孫子・九地篇兵の情は速きを主とす。人の及ばざるに乗じ、不虞の道に由り、その戒めざる所を攻むるなり。
-
『長短経』地形孫子曰く「三に曰く地利。地利なる者は、遠近・険易・広狭・死生なり。故に山林・険阻・沮沢の形を知らざる者は、軍を行ること能わず。郷導を用いざれば、地利を得ること能わず。故に兵を用うるに、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、汜地有り、囲地有り、死地有り〔九地の名なり〕。諸侯自ら其の地に戦うを、散地と為す〔其の境内の地に戦えば、士卒の意専らならず、自ら潰ゆるの心有るなり。故に経に曰く、散地は、吾将に其の志を一にせんとす、と〕。人の地に入りて深からざる者を、軽地と為す〔人の地に入りて未だ深からざれば、士卒の意尚お未だ専らならずして、軽く走るなり。故に経に曰く、軽地は、吾将に之をして属せしめんとす、と〕。