長短経 / 地形
孫子曰、“三曰地利。地利者、逺近、險易、廣狹、死生也。故不知山林、險阻、沮澤之形者、不能行軍、不用鄉導、不能得地利。故用兵、有散地、有輕地、有争地、有交地、有衢地、有重地、有汜地、有圍地、有死地〔九地之名。〕諸侯自戰其地、為散地〔戰其境内之地、士卒意不專、有自潰之心也。故《經》曰、“散地、吾將一其志也”。〕入人之地而不深者、為輕地〔入人之地未深、士卒意尚未專、而輕走也。故《經》曰、“輕地、吾將使之屬也”。〕
新字:孫子曰、“三曰地利。地利者、遠近、険易、広狭、死生也。故不知山林、険阻、沮沢之形者、不能行軍、不用郷導、不能得地利。故用兵、有散地、有軽地、有争地、有交地、有衢地、有重地、有汜地、有囲地、有死地〔九地之名。〕諸侯自戦其地、為散地〔戦其境内之地、士卒意不専、有自潰之心也。故《経》曰、“散地、吾将一其志也”。〕入人之地而不深者、為軽地〔入人之地未深、士卒意尚未専、而軽走也。故《経》曰、“軽地、吾将使之属也”。〕
書き下し
孫子曰く「三に曰く地利。地利なる者は、遠近・険易・広狭・死生なり。故に山林・険阻・沮沢の形を知らざる者は、軍を行ること能わず。郷導を用いざれば、地利を得ること能わず。故に兵を用うるに、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、汜地有り、囲地有り、死地有り〔九地の名なり〕。諸侯自ら其の地に戦うを、散地と為す〔其の境内の地に戦えば、士卒の意専らならず、自ら潰ゆるの心有るなり。故に経に曰く、散地は、吾将に其の志を一にせんとす、と〕。人の地に入りて深からざる者を、軽地と為す〔人の地に入りて未だ深からざれば、士卒の意尚お未だ専らならずして、軽く走るなり。故に経に曰く、軽地は、吾将に之をして属せしめんとす、と〕。
現代語訳
孫子は言う。「三つ目は地の利である。地の利とは、遠近、険しさと平坦さ、広さと狭さ、生きる地と死ぬ地のことである。だから山林、険しい地、沼地の地形を知らない者は軍を進められず、道案内を使わなければ地の利を得られない。だから兵を用いるには、散地、軽地、争地、交地、衢地、重地、汜地、囲地、死地がある〔九つの地の名〕。諸侯が自国の地で戦うのを散地という〔自国の中で戦えば、兵の心が一つにならず、自ら崩れる心がある。だから兵法書に、散地では兵の志を一つにする、とある〕。敵の地に入ってまだ深くないのを軽地という〔敵地に入ってまだ深くなければ、兵の心はまだ一つにならず、たやすく逃げ帰る。だから兵法書に、軽地では兵を離れないようにつなぐ、とある〕。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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孫子・九地篇孫子曰く、凡そ用兵の法は、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、圮地有り、囲地有り、死地有り。
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孫子・九地篇これを亡地に投じて然る後に存し、これを死地に陥れて然る後に生く。
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『長短経』地形是の故に、散地は戦うこと無かれ〔士卒家を顧み、以て戦うべからず〕。軽地は則ち止まること無かれ〔敵地に入ること浅く、士の意尚お未だ堅からず。以て敵に遇うべからず。自ら当に其の心を堅くすべし〕。争地は則ち攻むること無かれ〔三道に攻むるに、当に先ず地利を主とすべし。先に其の地を得たる者は、攻むべからず〕。交地は則ち絶つこと無かれ〔相及属するなり。交地は、俱に進退すべし。兵を以て絶たず〕。衢地は則ち交わりを合わせよ〔諸侯を佐くるなり。当に交わりを諸侯に結ぶべし〕。重地は則ち掠めよ〔糧食を蓄うるなり。入ること深ければ、士卒堅固なり。則ち財物を掠取すべし〕。汜地は則ち行け〔止まらざるべきなり〕。囲地は則ち謀れ〔其の謀を撃つなり。則ち当に権謀奇譎すべし。以て難を免るべし〕。死地は則ち戦え〔殊死して戦うなり。未だ戦わざるに先ず之を励まして曰く「愚戇にして軍を用うること明らかならず、乃ち囲阨の地に随い、士大夫の憂いを益すことを慮ること無かれ。皆将の罪なり。今日の事は、此の一挙に在り。若し力を用いずんば、身は当に野草に膏し、虫獣の食と為り、妻子は求索する所無かるべし。克たば則ち身栄え、賞禄焉に在り。勉めざるべけんや」と〕。
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孫子・九地篇兵の情は速きを主とす。人の及ばざるに乗じ、不虞の道に由り、その戒めざる所を攻むるなり。
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孫子・九地篇是の故に散地には則ち戦うこと無かれ、軽地には則ち止まること無かれ、争地には則ち攻むること無かれ、交地には則ち絶つこと無かれ、衢地には則ち交を合わせ、重地には則ち掠め、圮地には則ち行き、囲地には則ち謀り、死地には則ち戦う。
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孫子・九地篇九地の変、屈伸の利、人情の理は、察せざるべからず。