孫子 / 九地篇
是故散地則無戰,輕地則無止,爭地則無攻,交地則無絕,衢地則合交,重地則掠,圮地則行,圍地則謀,死地則戰。
新字:是故散地則無戦,軽地則無止,争地則無攻,交地則無絶,衢地則合交,重地則掠,圮地則行,囲地則謀,死地則戦。
書き下し
是の故に散地には則ち戦うこと無かれ、軽地には則ち止まること無かれ、争地には則ち攻むること無かれ、交地には則ち絶つこと無かれ、衢地には則ち交を合わせ、重地には則ち掠め、圮地には則ち行き、囲地には則ち謀り、死地には則ち戦う。
現代語訳
だから自国内の散地では戦わず、敵地に浅く入った軽地では留まらず、双方に利のある争地では正面から攻めず、往来自由な交地では部隊を分断させず、要衝の衢地では外交を結び、敵地深くの重地では現地調達し、行きにくい圮地では速やかに通過し、囲まれた囲地では策を用い、逃げ場のない死地では戦う。
解説
九つの地形それぞれに、取るべき行動を一対一で割り当てた実践の要約である。注目したいのは、九つのうち「戦う」と指示されているのが死地だけだという点だ。残る八つは、留まるな、攻めるな、通過せよ、謀れ——ほとんどが戦闘を避ける指示である。孫子の兵法が戦わないための技術だと言われる理由がここにも表れている。置かれた状況の種類を見分けられれば、取るべき行動はおのずと決まる。迷いの多くは、いま自分がどの地にいるかを判定していないことから生じる。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
九地状況判断行動指針回避死地
関連する章句
-
孫子・九地篇孫子曰く、凡そ用兵の法は、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢地有り、重地有り、圮地有り、囲地有り、死地有り。
-
孫子・九地篇是の故に散地には吾将に其の志を一にせんとす。軽地には吾将に之を属せしめんとす。争地には吾将に其の後に趨らんとす。交地には吾将に其の守りを謹まんとす。衢地には吾将に其の結を固めんとす。重地には吾将に其の食を継がんとす。圮地には吾将に其の途を進まんとす。囲地には吾将に其の闕を塞がんとす。死地には吾将に之に示すに活きざるを以てせんとす。故に兵の情は、囲まるれば則ち禦ぎ、已むを得ざれば則ち闘い、過ぐれば則ち従う。
-
孫子・九地篇兵の情は速きを主とす。人の及ばざるに乗じ、不虞の道に由り、その戒めざる所を攻むるなり。
-
孫子・九地篇これを亡地に投じて然る後に存し、これを死地に陥れて然る後に生く。
-
孫子・九地篇九地の変、屈伸の利、人情の理は、察せざるべからず。
-
『韓非子』說林下二十三夫れ一臣を殺して一国を存す、其れ吉と言はざるは何ぞや。且つ死者知無くんば、則ち臣を以て鼓に釁るも益無きなり。死者知有らば、臣将に戦ひに当たるの時、臣鼓をして鳴らざらしめん」と。荊人因りて殺さざるなり。知伯将に仇由を伐たんとして道難くして通ぜず、乃ち大鐘を鋳て仇由の君に遺る。仇由の君大いに説び、道を除きて将に之を内れんとす。赤章曼枝曰く、「不可なり。此れ小の大に事ふる所以なり、而るに今や大以て来る、卒必ず之に随はん、内るべからざるなり」と。仇由の君聴かず、遂に之を内る。赤章曼枝因りて轂を断ちて駆り、斉に至り、七月にして仇由亡ぶ。越已に呉に勝ち、又卒を荊に索めて晋を攻めんとす。左史倚相、荊王に謂ひて曰く、「夫れ越は呉を破りて、豪士死し、鋭卒尽き、大甲傷つく。今又卒を索めて以て晋を攻むるは、我に病まざるを示すなり。師を起こして与に呉を分かつに如かず」と。荊王曰く、「善し」と。因りて師を起こして越に従ふ。越王怒り、将に之を撃たんとす。大夫種曰く、「不可なり。吾が豪士尽き、大甲傷つく。我与に戦はば、必ず克たず。之に賂ふに如かず」と。乃ち露山の陰五百里を割きて以て之に賂ふ。荊、陳を伐ち、呉之を救ふ。軍間三十里。雨ふること十日、夜星あり。左史倚相、子期に謂ひて曰く、「雨ふること十日、甲輯まりて兵聚まる。呉人必ず至らん、之に備ふるに如かず」と。乃ち陳を為す。陳未だ成らざるに呉人至り、荊の陳を見て反る。左史曰く、「呉は反覆六十里、其の君子必ず休み、小人必ず食はん。我三十里を行きて之を撃たば、必ず敗るべきなり」と。乃ち之に従ひ、遂に呉の軍を破る。韓・趙相与に難を為す。韓子、兵を魏に索めて曰く、「願はくは師を借りて以て趙を伐たん」と。魏の文侯曰く、「寡人は趙と兄弟なり、以て従ふべからず」と。趙も又兵を索めて以て韓を攻めんとす。文侯曰く、「寡人は韓と兄弟なり、敢へて従はず」と。二国、兵を得ずして、怒りて反る。