孫子 / 軍争篇
故用兵之法,高陵勿向,背丘勿逆,佯北勿從,銳卒勿攻,餌兵勿食,歸師勿遏,圍師必闕,窮寇勿迫,此用兵之法也。
新字:故用兵之法,高陵勿向,背丘勿逆,佯北勿従,銳卒勿攻,餌兵勿食,帰師勿遏,囲師必闕,窮寇勿迫,此用兵之法也。
書き下し
故に用兵の法は、高陵には向かうこと勿かれ、丘を背にするには逆らうこと勿かれ、佯り北ぐるには従うこと勿かれ、鋭卒には攻むること勿かれ、餌兵には食らうこと勿かれ、帰師には遏むること勿かれ、囲師には必ず闕き、窮寇には迫ること勿かれ。此れ用兵の法なり。
現代語訳
用兵の原則はこうである。高地の敵に向かうな。丘を背にした敵に逆らうな。偽って逃げる敵を追うな。士気の鋭い敵を攻めるな。餌の兵に食いつくな。国へ帰る軍を止めるな。包囲するときは必ず逃げ道を空けよ。追い詰められた敵に迫るな。
解説
八つの禁止事項を並べた実践的な一段である。すべて「やるな」で統一されているところに、孫子の性格がよく出ている。中でも「囲師必闕」——包囲するときは必ず一方を空けよ、という一条は逆説的で示唆に富む。完全に囲めば相手は死に物狂いになり、こちらの損害も大きくなる。逃げ道を残すほうが早く終わる。交渉でも、相手の面子を完全に潰すと合意は遠のく。追い詰めきらないことは、優しさではなく計算である。