孫子 / 軍争篇
三軍可奪氣,將軍可奪心。是故朝氣銳,晝氣惰,暮氣歸。故善用兵者,避其銳氣,擊其惰歸,此治氣者也;以治待亂,以靜待嘩,此治心者也;以近待遠,以佚待勞,以飽待饑,此治力者也。
新字:三軍可奪気,将軍可奪心。是故朝気銳,昼気惰,暮気帰。故善用兵者,避其銳気,擊其惰帰,此治気者也;以治待乱,以静待嘩,此治心者也;以近待遠,以佚待労,以飽待饑,此治力者也。
書き下し
三軍は気を奪うべく、将軍は心を奪うべし。是の故に朝の気は鋭く、昼の気は惰り、暮れの気は帰る。故に善く兵を用うる者は、其の鋭気を避け、其の惰帰を撃つ。此れ気を治むる者なり。治を以て乱を待ち、静を以て嘩を待つ。此れ心を治むる者なり。近きを以て遠きを待ち、佚を以て労を待ち、飽を以て饑を待つ。此れ力を治むる者なり。
現代語訳
全軍からは士気を奪うことができ、将軍からは心を奪うことができる。朝の気は鋭く、昼には緩み、夕暮れには帰りたくなる。だから戦の巧みな者は、鋭い時を避け、緩んだ時と帰りたがる時を撃つ。これが気を制することである。整った状態で乱れた相手を待ち、静かな状態で騒がしい相手を待つ。これが心を制することである。近くで遠来の相手を待ち、休んだ状態で疲れた相手を待ち、満腹で飢えた相手を待つ。これが力を制することである。
解説
相手の状態を時間軸で読む、という発想が示されている。同じ相手でも、朝と夕方では別物である。孫子は勝負どころを、相手が強いか弱いかではなく、いま相手がどの段階にいるかで決めた。交渉でも、相手の期末、繁忙期、担当者の異動直後といった時間の条件は、内容そのものと同じくらい結果を左右する。そして治気・治心・治力のいずれも、こちらが整えて待つという形を取る。焦って仕掛ける側が不利になるようにできている。